VRデバイスの品薄と、ブラウザで動くバーチャルなサービス。「幅広い入口」で生まれる可能性を考える

「幅広い入口」で生まれるメタバースの可能性

 『Meta Quest 2』が、にわかに店頭から姿を消しているというウワサが広がった。Metaの公式サイトでは(少し時間はかかるが)在庫はまだまだありそうに見えるが、家電量販店やAmazonでは売り切れているようだ。即納できる場所が減っている状況は、人によっては不 便だろう。

 ハイエンドVRヘッドセットの代表格である『VALVE INDEX』も、国内正規代理店での販売価格が値上がりした。フルセット138,380円が、3万円上がって165,980円(いずれも税込)。値上げの理由は正式に明かされていないが、このところ続く円安の影響は大きいだろう。

 『Meta Quest 2』の在庫減少も、「円安を受けて海外へ転売するための買い占め」とのウワサを聞く。いずれにせよ、加速するVR・メタバースブームの中で、アクセスできる手段がすぐに手に入らないのはもどかしい。なるべく早く状況が好転することを願いたいところだ。

 VR環境をすぐに手に入れられない人にとって、Webブラウザだけで動くサービスは、最もハードルの低い入口となるだろう。

 配信アプリの「ツイキャス」が7月21日に発表した「ツイキャスVV」は、Webブラウザから利用できる3Dバーチャル空間だ。VRM形式のアバターを利用でき、ほかのツイキャスユーザーやリスナーを招待URL経由で同じ空間に呼ぶこともできる、手軽な「3Dアバター交流の場」を目指しているサービスである。

 VTuberの利用者も少なからずいる「ツイキャス」では、2021年より配信者のバーチャル化企画「ツイキャス100V」が展開されており、インターネット上での活動のあり方としての「バーチャル」に本格的に注目している様子だ。没入度こそVRにはかなわないが、「アバター越しの交流」の本質はWebブラウザでも失われにくい。バーチャルの世界に足を踏み入れる「ツイキャス」ユーザーがどのくらい生まれるかは注目だ。

 アバター制作ツールもWebブラウザだけでできるようになるかもしれない。7月22日に発表された「VketAvatarMaker」は、Webブラウザだけで直感的にアバターを制作できるサービスだ。作ったアバターはすぐにVRM形式で出力できるため、上記の「ツイキャスVV」や「cluster」など、VRM対応サービスへ遊びにいくためのアバターを手早く用意することができる。

 現時点ではベータ版であり、エディットの幅はやや少なめで、出力されるアバターも表情設定などが付与されていない。が、5分も要さずアバターを作り上げられる手軽さは魅力的だ。アバターのデザインも相まって、ディープなメタバースカルチャーに慣れ親しんでいないライト層の活躍が期待できそうだ。

 先日、東京理科大学で「VRChat」を活用した異分野交流イベントが開催されたが、東京大学の大学院工学系研究科・工学部では7月21日に「メタバース工学部」の設立が発表された。これは「メタバース工学」を学ぶ学部……ではなく、「メタバース上に作る工学部」という意味合いのようだ。

 「メタバース工学部」では、「デジタル技術を駆使した工学分野における教育の場」として、中高生や工学部生を対象としたキャリア総合情報サイトや、ジュニア工学教育プログラムなどを提供する予定だ。いわゆる世間一般に広まっている「メタバース」のイメージと合致するかはわからないが、「パラレルな現実」としてより幅広い人に工学の門戸を開く取り組みは興味深いところだ。

 そして、東京理科大学にて開催された異分野交流イベントの「VRChat」会場は、7月22日に一般公開が始まった。イベント内で発表された動画やスライド、ポスターなども全て設置されているため、イベント当日の追体験も十分可能だ。こうして「場や時間の保存・再生」ができるのは、オンラインに用意された空間ならではの強みだろう。ちなみに、VRで体験できる立体視コンテンツもあるため、できればVRで会場を覗いてみてほしい。

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