アンモナイトのロボット、なぜ製作? 研究者が“泳がせる”ことに成功
ユタ大学のプールでコイル状の貝殻が放たれ、やがて自力で泳ぐ様子を研究者と水中カメラが注意深く見守った。貝殻は数百年前の海を泳いでいた太古の生物、アンモナイトを再現したロボットだ。
太古の生物を蘇らせる『ジュラシック・パーク』のような試みは、ユタ大学地質・地球物理学部の研究として行われた。アンモナイトを3Dプリントしたロボットにし、泳ぎを再現するのが目的だ。
アンモナイトは恐竜よりも前から地球に生息し、恐竜と同時期にも生息していた海洋動物だ。硬いコイル状の殻は、水中での自由な移動に制限を与えたはずだが、アンモナイトは進化を遂げながら何億年も存続し、あらゆる大量絶滅を生き延びてきた。このような特性から、アンモナイトは進化的バイオメカニクスを解き明かす格好の材料となると考えられる。太古の時代にはアンモナイトのように殻を持つ頭足類はどこにでもいたが、現在はタコやイカのように殻を持たない生物が主流で、外殻を持つのはオウムガイだけである。そのため、動きを研究するにはロボットを作って、アンモナイトを太古から呼び戻す必要があった。
この実験は殻の形が遊泳能力にどのような影響を与えるのかという疑問の解決に役立った。実験の結果、水中での安定性と操縦性の間にトレードオフの関係があることがわかったのだ。アンモナイトの殻の進化は、最適なデザインだというだけではなく、さまざまな利点を持つデザインを模索してきた結果であることが示唆された。
この実験で最大の課題は浮力だった。さらに内部の電子機器を保護し、水漏れによって微妙な浮力バランスが変化しないように、水密性を確保する必要があった。
試行錯誤の末、3Dプリントされた模型を組み立て、重量を加えると、いよいよプールで泳がせることに。水中にロボットアンモナイトを放ち、3D空間の位置を追跡しながら、殻の種類ごとに実験を行った。
これまでアンモナイトの殻の多くは流体力学的に「劣っている」とする解釈もあり、殻のデザインのせいで動きが制限されすぎているとの指摘があった。今回の実験によって、流体力学的に劣ると解釈されてきたアンモナイトも水中を優雅に泳げることが明らかになった。
(画像=YouTubeより)
〈Source〉
https://attheu.utah.edu/facultystaff/robotic-ammonites-pg/
https://phys.org/news/2022-07-robotic-ammonites-recreate-ancient-animals.html