人気YouTuberに相次ぐ著作権トラブル 2組のクリエイターが直面した問題とは

 6月5週目〜7月1週目にかけて、東海オンエアと「TOMIKKU NET」のトミックという人気YouTuber2組が著作権問題に直面していることが発覚。これまでも動画クリエイターたちの著作権をめぐる問題は度々浮上しているが、今回の2組は一体何が問題だったのか。それぞれの著作権問題を紐解いてみたい。

 東海オンエアは2019年2月3日、YouTubeに「【超訳ぐりとぐら】『てつとゆめ』」と題した動画を投稿。この動画は、双子の野ねずみが登場する子ども向けの絵本『ぐりとぐら』のパロディー動画で、てつやが青い頭巾とオーバーオールで「ぐり」に、ゆめまるが赤い頭巾とオーバーオールで「ぐら」に扮し、絵本の代表的なストーリーである巨大なカステラを作っていた。

 しかし動画の公開から3年以上が経った6月27日、Twitterには動画の削除に気づいたファンから悲しみの声が投稿されるようになり、一部メディアがその真相を報じることに。この動画が削除された理由は、一言でいうと東海オンエア側の著作権侵害。動画のURLをクリックすると、画面には「この動画は、福音館書店 から著作権の申し立てがあったため削除されました」と表示され、現在は視聴できないようになっている。

 福音館書店とは、「ぐりとぐら」の出版元。同社のWEBサイトには、著作物の有料、営利目的での利用については問合せを必須としている旨が記載されているが、今回の流れを見る限りでは、東海オンエア側が問合せをすることなく動画を制作、公開したとみられる。実はこの動画については、東海オンエアが活動拠点とする愛知県岡崎市の事業である「岡崎フィルムコミッション」も撮影に協力、WEBサイトには撮影の様子が公開されていたが、こちらも現在ではそのページが閲覧できなくなっており、影響が大きかったことがわかる。

 問題となってしまった動画はファンの中でも人気なコンテンツだった一方、使用した卵の殻を踏みつけるシーンやたばこを吸いながら車で走り去るシーンもあった。動画の削除には問合せの有無以外にも、子ども向け絵本を基にした動画として、版元の意にそぐわなかったという意図があるのかもしれない。

 「TOMIKKU NET」のトミックは、著作権フリーのBGMを使用していた動画に対し、著作権侵害の申し立てをうけ、動画が削除されてしまったことを告白した。今回のトミックのケースは、YouTubeの「Content ID」という、著作権管理のために楽曲などを著作権保有者などがYouTubeに登録できるシステムが関わっている。

 このContent IDシステムには、登録者の作品と一致する動画があった場合、登録者が閲覧できないように該当動画全体をブロックすることや、動画に広告を掲載し、動画を収益化、動画投稿者と収益を分配する仕組みなども設けられている。著作権者にはかなりありがたいシステムなのだが、トミックいわく、今回の問題はこのシステムを悪用したものだという。

 トミックの話では、Content IDには動画投稿者が使用できる管理ツール「YouTube Studio」のオーディオライブラリで提供している楽曲も登録できてしまい、削除された動画に使用していたピョートル・チャイコフスキーが作曲した組曲『くるみ割り人形』の「金平糖の踊り」も、オーディオライブラリで提供されていたそうだ。

 オーディオライブラリで提供されている楽曲は、YouTubeが「著作権上安全である」としている曲なのだが、トミックの動画には、ある団体が「金平糖の踊り」の著作権を主張してきたとのこと。申し立てを受けたトミックが、複数回にわたり反論したことで、団体側が動画を削除してきたという。

 トミックは今回の騒動に、「それがまかり通ったら絶対ダメでしょ」「本当にやっていることがジャイアン」と、動画削除の不当性を訴えるとともに、裁判の準備を進めていることも明かしている。同じような目に遭うクリエイターが増えないよう、裁判を決意したというトミックだが、この問題ではYouTubeが提供するシステムの問題点も明らかになった。

登場曲が使えなくなってしまった

 楽曲使用をめぐる著作権においては、昨年6月、江頭2:50が1年半使用していた登場曲に著作権侵害の申し出が相次ぎ、曲を変更したという事例もある。この際、江頭側は著作権侵害を主張してきた相手に問い合わせるも、回答が得られず詳細は不明と説明。楽曲については少なからず、定期的に著作権問題が勃発している印象があり、YouTuberたちの注意・意識に頼るだけではなく、YouTube側のシステムアップデートが必要な時がやってきたのかもしれない。

 著作権侵害といえども、今回の2組においては問題の背景はまったく異なる。YouTubeのシステムを悪用した申し立ては、YouTuberのみの努力では解決できないが、原作があるコンテンツにおいては、周りのサポートで防げたかもしれない。影響力の大きい2組の問題は、改めて著作権について考えさせられる事例であり、ほかのYouTuberたちのよい参考になったのではないだろうか。

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