『Weekly Virtual News』(2022年6月27日号)
サンリオ、ソフトバンク、群馬県――相次ぐメタバース活用・検討の波と、実際にメタバースを体験することの大切さ
昨年12月に『VRChat』を大いに盛り上げたサンリオが、再び『VRChat』にやってくる。7月15日より開催される新作ショー『Nakayoku Connect』だ。現実のサンリオピューロランドにて上演されるショーと、『VRChat』内に作られた「バーチャルピューロランド」にて上演されるバーチャルショーが同時に開催されるという、前例のない試みが行われる予定だという。
バーチャルショーの監督を務めるのは、昨年開催された『SANRIO Virtual Fes in Sanrio Puroland』にて、大反響を呼ぶパフォーマンスを披露したVTuber・キヌだ。空間ハックを初めとした視覚的表現を駆使する「パーティクルライブ」とポエトリーリーディングを武器とする気鋭のバーチャルアーティストが、サンリオの新作ショーをどのように仕上げてくるか、非常に興味深い。現実側のショーも、演出家・脚本家の中屋敷法仁を監督として採用するなど、サンリオのエッジの効いたエンタメへの取り組みは毎回驚かされるばかりだ。
サンリオのみならず、ビッグネームのメタバースへの進出は今週も続いている。ソフトバンクは6月23日に、スマートフォン向けメタバースアプリ『ZEPETO』へ、バーチャル携帯キャリアショップ「ソフトバンクショップ in ZEPETO」をオープンした。実店舗を模したワールドを作るのみならず、クルーがアバターで接客をするという、本格的なメタバース上での出店だ。
『ZEPETO』はZ世代に人気のアバター着せ替えアプリから出発し、現在はワールドへの訪問機能も搭載し、現在「Z世代向けメタバース」として期待を集めている。こうしたプラットフォームへの出店に合わせて、ビデオ撮影ブースやアバターファッションアイテムといった施策を展開する予定だ。「実際にクルーがいる」という体験と合わせて、「場所だけ作って終わり」から一歩進んだ、新たな顧客体験の創造が期待される。
国内でメタバース関連団体が乱立したのは記憶に新しいが、先週はグローバルな団体設立が確認された。技術コンソーシアムのクロノスグループがホストを務めるフォーラム「Metaverse Standards Forum」だ。「オープンで包括的なメタバース」の構築をミッションに掲げる、企業と標準化団体の中間に立つフォーラムとのことだ。
すでにAdobe、Epic Games、Unity、Meta、Microsoftが参画しており、日本企業からはソニー・インタラクティブエンタテインメント、また日本の関連団体として一般社団法人Metaverse Japan、VRMコンソーシアムの加盟も確認されている。メタバースへのグローバルな取り組みがより一層加速していくことだろう。「誰がイニシアチブを握るか」という点も含め、その動向を注視したいところだ。
ひとつの仮想世界を構築するだけでも、現在は専門的なスキルや経験が求められる。まだまだクリエイターの数が少ない中で、企業や団体は人材確保に迫られるはずだろう。群馬県はそうした人材を、公募型プロポーザルという形で求めることにしたようだ。
6月22日に発表されたプロポーザルの内容は、「群馬県民の若者が作る作品などを展示するメタバースワールド企画・作成・運営を行う個人・法人を募集する」というもの。予算上限は250万円で、来年3月末までの業務委託となるとのことだ。これが「適切な案件」であるかどうかは、筆者の観測範囲では賛否が分かれている。「実績作りとしては有用」という意見もあれば、「保守・運営まで含めて250万円は厳しい」という見解もある。相場と業務内容をめぐる認識のずれは、黎明期ならではの問題である。公募結果から前向きなアクションが起こることを期待したい。