FIREBUG佐藤詳悟×WACK渡辺淳之介が語り合う“エンタメ論”。秀でるアーティストの共通点とは?
経営者とプロデューサーで違うのは「本音と建前」の部分
ーー渡辺さんにお聞きしたいのが、BiSHについてです。昨年末にNHK紅白歌合戦に出場するなど、破竹の勢いで成長してきたわけですが、成長を実感した瞬間とかはあるのでしょうか。
渡辺:BiSHに関しては、それこそ自分が立ち上げた会社の社員がいないころから一緒にやっているアーティストなので、地方行脚するときは夜行バスで一緒に遠征したりしていたので今でのチンチンクリンのメンバーたちなんですが、今のBiSHは周りから「オーラがあるよね」と言われるようになってびっくりしてます。昔を知っている自分からすると、ハイブランドの広告に出演するメンバーの姿を見て「大丈夫かな」と思ってしまいますが(笑)。それでも、いまの活躍ぶりを見ているとだいぶ成長したなと感じますね。
あと、アイナが2022年3月に大阪城ホールで行った公演でのエピソードがあって、「バンドに頼らず、ひとりでやってもらえないか」と半ばお願いする形でソロライブを提案したんです。最初は半信半疑でしたが、次第に彼女から頻繁に連絡をくれるようになって。セットリストの相談や演出の要望などをどんどん出すようになったのを見て「独り立ちしていくんだな」と感じました。
ーー他方で、渡辺さんはWACKという会社の代表取締役という顔と、音楽プロデューサーという顔の両面を持っていますが、ある種その2つは相反するものでもあると感じています。経営者として、あるいはプロデューサーとしての仕事の振る舞いはどのように変えていますか。
渡辺:会社の経営者としては社員が働きやすいようにとかは考えますね。とは言いながらいくらでもやろうと思えばいくらでもやることがある職業なので本音と建前はちょっと違うかもしれません(笑)でも遊びも大事だと思っていて「これは自分のプロデュースに取り入れやすそうだな」と考えたりもしていて。要は遊びながら、楽しく過ごすことで仕事にも活きてくるってことも感じてるのでよく遊べとも言っていて。
佐藤:吉本にいたころは正直、かなりの時間を仕事に費やしていました。別に会社に不満とかはなく、単純に仕事がしたくてやっていただけで。でもいま振り返ると、若い感性のある時期に遊びを通して、もっといろんなものを見ていたら、また違った企画やクリエイティブが生まれていたかもしれません。
渡辺:あとは、つばさレコーズ時代の経験が今でもすごく活かされていると感じています。当時、社長にすごく可愛がってもらっていて。打ち合わせや会食への同席、会議の議事録の書き起こしなどを1〜2年やっていたんですが、社長から目上の人への対応の仕方や営業の仕方など、さまざまなことを教えてもらいました。あのころを思い返すと、自分が本当の意味でうまく対処できていたかというと、おそらくできていなかったんですよね。それを社長は気づかないふりをしてくださって、あえて見逃してくれていたと思うんです。その度量の大きさはすごいなと思いました。今社長の立場ですが自分ができるかというとできていないので。今自分が学んできた経験や実学をもとに、「WACK塾」を2022年7月に開校予定で、次世代のプロデューサーを育成するための活動もしていければと考えています。
ーー最後に今後お二人がやっていきたい、仕掛けていきたいことについて教えてください。
渡辺:以前、佐藤さんからご飯に誘ってもらったので、今度は自分からお誘いして面白い企画の話や仕掛けたいことについてざっくばらんに話したいですね(笑)。なにか目的を持つよりも、常に楽しいことを探している感じなので、今後も面白いことを企画していければなと思います。
佐藤:2022年4月に渋谷の桜ヶ丘にオープンしたエンターテインメントスタジオの「ばぐちか」で、何か尖った面白い企画をやりたいと思っています。ここでしかできないコンテンツを考え、いろんなアーティストやクリエイターを巻き込みながら、誰も想像したこともない奇抜なイベントを開催してみたいですね。