新MacBook Airの登場などで注目 『WWDC2022』の発表は何がすごかったのか

 前述したように、WWDCは基本的に開発者向けに、将来のOSの新機能やそれにまつわる開発情報を提供する場だ。今回の基調講演ではiOS、watchOS、macOS、iPad OSについて、新機能が紹介された。

 個人的に興味深かったのは新しい「CarPlay」。対応する車両ではインストルメントパネル(メーターパネル)まで覆うような大型ディスプレイにも対応し、車両情報の表示にも対応するなど、大幅な機能向上が予定されている。こうした機能は車両メーカーの協力なしには実現し得ないだけに、噂されているApple Carとの兼ね合いなども含めて注目したい機能だ。

 またiPhoneを非接触決済端末として利用できる「Tap to Pay for iPhone」の登場も大きい。先日販売が終了したiPod touchを決済端末として活用していた店舗も多いようだが、決済用の周辺機器が不要で、NFC経由でのタッチ決済がiPhone単体で可能になるとすれば、こうした決済サービスのシェアに大きな影響を与える可能性もある。日本では当面使えない機能のようだが、QRコード決済事業者の対応などにも注目したい。

 watchOS 9では、睡眠解析や心房細動の検出、投薬リマインダーなど、ヘルスケア関連の機能強化が多数盛り込まれている。Apple Watchにおいて、スポーツとヘルスケアが代表的な利用目的として挙げられるのだが、Apple自身もその点はしっかり理解しているようで、順当に強化を続けている。これらの機能が効果的に作用するには、連続して着用していることが重要なため、将来のApple Watchではさらにバッテリー駆動時間が重要になるだろう。

 macOSはバージョン13になり、名称は「macOS Ventura」となる。Venturaは著名なサーフィンスポットなどを擁するカリフォルニア州南部の都市だ。

 macOS Venturaでは、ウィンドウが散らかりがちな人の作業効率を高める機能として「ステージマネージャ」が導入される。従来のmacOSでも、作業に集中しやすいフルスクリーンモードや、ウィンドウをサムネイル化したり、アプリケーションごとにウィンドウをグループ化したりする「Mission Control」が用意されているが、「ステージマネージャ」では開いているウィンドウが画面左側にサムネイル表示され、作業中のウィンドウだけが大きく表示される。このままではウィンドウ間のドラッグ&ドロップなどがやりにくいが、複数のウィンドウを重ねて表示することもできるので、最小限のウィンドウだけを出して作業できる。

 後述するように、ステージマネージャはmacOS以外にも採用される。今回WWDCのキーノートで紹介されたステージマネージャ以外の新機能の多くは各OSで共通するものが多く、スマートウォッチからデスクトップ、スマートフォンなどに至るまで、Appleプラットフォーム全体で機能や操作感の統一が実現することになる。これは他社にはない大きな強みとなるだろう。

 iPad OS 16では、macOSとの親和性がさらに高まることになる。システム全体を通してのコピー&ペーストや「ファイル」アプリでのフォルダ容量表示、拡張子の変更といった、macOSの「Finder」的な操作が可能になるのに加えて、macOS Venturaにも採用された「ステージマネージャ」が導入される。これにより、4つまでのアプリグループを切り替えつつ利用できるようになるほか、iPad OSでは初めて、画面が分割されるSplit Viewではなく、macOSのように2つのウィンドウを重ねて利用できるようになった。

 さらに、iPadに外部ディスプレイを接続して、ミラーリングではなく拡張ディスプレイとして利用できるようになる。拡張ディスプレイ側にもDockやアプリが表示できるため、ステージマネージャを使えば、iPad Pro本体と合わせて最大8つのアプリを同時に開いて利用できる。

 こうした「iPad OSのmacOS化」によって、かなりの割合のユーザーがiPadだけで仕事をこなすことができるようになるだろう。逆に見れば、アップルはタッチ操作のMacを絶対に出さないという意志とも受け取れるが、SidecarでiPadをMacのサブディスプレイ化すれば、Macでタッチ操作が実現すると言えないこともない。いずれにしてもiPadはMacのお株を奪うほど強化されつつ、Macの機能を拡張することもできる、無二の存在として今後も強化されるようだ。

 WWDC22は基調講演から各セッションまで、すべてが「Developer」アプリから確認できる。これらを通じてAppleが見据える将来が垣間見えてくるので、興味のある方は是非チェックしてみてほしい。開発者以外でも十分興味深いセッションが多数あるはずだ。

関連記事