特集:社会は「ひとり空間」を求めている

「セルフネイルができるリモートボックス」なぜ誕生? 完全無人の美容ボックス「éclat+(エクラモア)」に込めた思いとは

 コロナ禍により、簡易的な防音室や駅中のリモートボックス、娯楽施設のソロワークプランなど、社会における「ひとり空間」が求められその需要は高まっている。本特集では、ひとりひとりに合わせた空間を提供し、サービスや製品を販売している企業に、今後の社会における「ひとり空間」の重要性についてインタビューしていく。

 駅や商業施設などでよく見かけるようになったリモートワークボックス。その用途は主にテレワークやオンライン会議などだが、なんと「美容」に特化したボックスが誕生した。セルフ美容ボックス「éclat+(エクラモア)」では、完全無人の空間でネイルプリンターを使用してセルフネイルが行える。コロナ禍の非接触を求められた美容業界では、様々なサービスが生まれてきたが、新たな選択肢となるのだろうか。「éclat+(エクラモア)」を展開するE-Medical株式会社代表取締役の安藤恵理氏に、開発の経緯や、今後の美容と「ひとり空間」の関係性について話を伺った。(リアルサウンド編集部)

忙しくても美容を諦めて欲しくない。「éclat+(エクラモア)」開発の意図

ーー「éclat+(エクラモア)」の開発経緯を教えてください。

安藤恵理(以下、安藤):もともとは私の実体験をもとにサービス化に至りました。2021年に出産を経て仕事復帰した際、美容のような「自分をケアする時間」と仕事・ 育児の兼ね合いが取れなくなってしまったんです。エステやネイルサロンは予約できる時間が限られていますし、また、コロナ禍で不必要に人と接触することにも抵抗がありました。

 そんなときに、駅やビル内にあるリモートワークボックスを見て、気軽に立ち寄って自分だけの空間が得られることにインスピレーションが湧いたんです。仕事と育児に追われながらも、移動の合間や仕事前など1時間程度なら美容に費やすことができ、かつこうやって通勤途中に立ち寄ることができれば、自分をケアする時間を諦めざるを得ない方のために何かできるのではないかと。そういった思いで「éclat+(エクラモア)」を開発したんです。

ーーなぜ様々な美容体験があるなかでネイルを選んだのでしょう。

「éclat+(エクラモア)」で体験できるセルフネイル

安藤:本来はエステや脱毛ができるようにしたいという気持ちがありましたが、それだとメイクを落としたり、肌を露出したりしなくてはなりません。そもそもボックスに入って美容行為をするという概念がないため、少しでも心理的なハードルを下げたいという思いもあったので、最初は使う方に一番受け入れてもらえそうなネイルのサービスを立ち上げました。 

ーー「éclat+(エクラモア)」はマルイや渋谷ヒカリエなど主に商業施設に導入されていますが、どういった狙いがあったのでしょうか?

安藤:商業施設は駅から近いビルが多く、「何かのついで」に立ち寄れる場所として使ってもらいたいという思いがありました。リモートワークボックスは駅やオフィスビルに多く設置されていますが、こういった場所は美容とは遠いイメージですよね。商業施設であれば、コスメ売り場があったりアパレルのお店があったり、女性にとって美に向き合う空間がすでにできあがっている。数ある商業施設のなかでも、マルイ様はお客様層やサービスに対する理念が弊社と一致していたため、設置をお願いしました。 現在は新宿・錦糸町・大宮・町田・横浜・なんば・上野の7施設に展開しています。

ただセルフネイルをするだけで終わらせない、自分らしさを発信できる場所作り

ーー「éclat+(エクラモア)」が設置されて半年ほどですが、すでにリニューアルされています。

(左)1代目(右)2代目

安藤:新宿店に設置した1代目は、華やかで可愛らしいイメージでつくったのですが、実際にお客様の声を聞いてみると「ちょっと落ち着きがない」「もっとシックなイメージでいいのでは」との声が多かったんです。その結果を反映して、2台目以降は落ち着いたデザインに変更しました。 

ーーユーザーの声を即座に反映しているのですね。そのほかこだわった部分などはあるのでしょうか?

「éclat+(エクラモア)」の内装

安藤:内装は、ネオンだったりシールの陳列棚だったり、どこで写真を撮っても「映える」ように工夫しています。 写真だけでなくTikTokの撮影にも利用できるので、ただセルフネイルをするだけで終わらせない、そこから自分らしさを発信できる場所作りを目指しました。

ーー実際にどんなユーザーが使っているのでしょう。

安藤:店舗によりますが、 新宿店でいうと30代の仕事帰りの時間に来られる方がほとんどです。当初、新宿だったら大学生など10代後半〜20代前半の方が来店することを想定していたので意外でしたね。一方で上野や町田は20代前半の若い方が多いという違いも出てきています。

ーーでは、意外な使われ方などはありましたか?

安藤:ボックス内にはネイルプリンターを設置しているのですが、もともと用意されているデザインではなく、アニメのキャラやブランドのロゴなど、お客様の好きな画像を取り込んでプリントされている方が多かったんです。あらかじめプリントする画像を準備して来る方がいることには驚きました。キャラネイルは通常のネイルサロンだと1万円以上かかることもあるので、セルフで行う方が多かったのだと思います。

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