特集:社会は「ひとり空間」を求めている
「セルフネイルができるリモートボックス」なぜ誕生? 完全無人の美容ボックス「éclat+(エクラモア)」に込めた思いとは
“あえて「éclat+(エクラモア)」でセルフネイルをする”という動機作が課題
ーーサービスを開始してから課題に感じたことはありましたか?
安藤:ネイルをしたいと思ったとき、ネイルサロンなどの実店舗や、自宅で行うセルフネイルを想像する方が大半かと思います。「éclat+(エクラモア)」はそのどちらでもないので、どのようにお客様の生活の一部に浸透させるか、家でもできるセルフネイルをあえて「éclat+(エクラモア)」でするという動機作りが大変でした。
実際に来ていただければ可愛い内装や簡単にできるネイルシールにご満足いただけるのですが、やはり無人のボックスに入ってセルフで美容をするということは心理的障壁が大きいようで、ボックスは気になるけど、実際に中に入るお客様は少ないという状況が続いたんです。また、これまでにないサービスですので、「持ち物は必要なの?」「事前に準備しておくことはあるの?」と疑問点が多く、予約に至らない方もいたようでした。
ーー前例がないサービスなだけに、どうやって使えばいいのかというイメージが湧きづらかったのですね。
安藤:そうですね。なのでそういった声に対しては、使い方を説明する動画をSNSに載せたり、問い合わせには公式LINEを通して即時に対応するなど、お客様の疑問や不安を地道に解消していきました。
ーー無人であることから、管理の面で大変だったことはないのでしょうか?
安藤:よく「無人で防犯面は大丈夫?」という質問をいただくのですが、これまで盗難等のトラブルが発生したことは一度もありません。 BOX内には監視カメラも設置していますし、マルイ様のような人通りの多い商業施設の中にあることも防止できている一因なのではと考えています。
サロンが提供するのではなく、一人一人が自分に合った美容を選択できる時代へ
ーーコロナ禍において、美容業界は非接触への取り組みを推進した企業も多かった印象があります。今後はどうなると思いますか?
安藤:コロナ禍で「人と人との接触」について、多くの人が意識するようになりました。コロナが落ち着いたとしてもそれは変わらず、無駄な接触を避けることが重視されていくと思います。美容業界についても、人との距離が保てるセルフサービスは今後も増え、かつ必要な部分に必要なだけ利用でき、コストを抑えられるサービスが増えていくのではないかと。
ーーより美容サービスが細分化されていくのでしょうか。
安藤:そうですね。お客様が自分でできること、サロンなど人に任せることを選択していく時代なのかなと思います。サービス内容も同じで、例えばエステなどでは、これまでだと、サロンの提案するペースや費用で通い続けることがスタンダードでしたが、今後は自分のタイミングで、通いたい時に通いたい部位だけ、そんなサービスが増えていくのではないでしょうか。
ーー美容と「éclat+(エクラモア)」のような「ひとり空間」(ひとり専用の空間)の相性はいいと思いますが、今後こういった空間はどうなっていくと思いますか?
安藤:美容業界のテクノロジーの進化に伴って、1つの空間でもっといろいろなことができるようになると思います。 例えばサロンで使う鏡が肌の状況を分析し、おすすめのコスメを提案してそこからECサイトに誘導したり、皮膚科のオンライン診療を受け、薬剤の処方をしてもらえたりと、そういった最先端の技術と「ひとり空間」は相性も良いと思うので、うまくマージしていくのではないでしょうか。
単にセルフ美容では終わらない、プラスアルファのサービス提供が増え、お客様が自分で判断し、自分で選ぶ。サービス提供側はあくまでお客様の意思決定をサポートしていくイメージです。
ーー最後に今後の「éclat+(エクラモア)」の展望を教えてください。
安藤:現在は「セルフ脱毛+オンライン診療」のサービスを開発しています。 サロンなどでも、いまでは比較的安価に施術を受けることができるようになりましたが、まだまだ高価に感じる方もいるはずです。「éclat+(エクラモア)」にて脱毛機器を貸し出し、お客様自身で脱毛を行っていただくことで、コストを押さえることを可能にします。
とはいえ火傷や肌荒れを心配される方も多いかと思いますので、不安になったときにすぐに 医師に相談できるよう、オンライン診療も受診できるように開発を進めています。 そこからお客様の肌に合ったサプリ等をご提案することや、ドクターズコスメを処方することも考えています。今後はお客様一人ひとりに合わせた美容、かつそれを医療レベルで提供できる、そんなサービス作りを企画していく予定です。
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