未来の人気配信者のファン一号になれるかも? 視聴者0人の配信を表示してくれるサイト「Nobody.live」

pict by chenspec

 ゲーム機本体に配信機能が内蔵されたり、配信ソフトの設定方法を丁寧に解説してくれるサイトがあったりと、気軽に配信が行えるようになった昨今はゲームをプレイする際に「とりあえずインターネットに配信する」という人が増えている。1万5000人の前でゲームをする配信者がいる一方で、視聴者が0人のまま配信を終える配信者も珍しくない。

 「Nobody.live」は、そんな視聴者が0人の配信者にスポットを当てたサイトだ。サイトにアクセスすると、トップページにはランダムにTwitchの配信画面が表示される。画面にカーソルを合わせると「1人が視聴中」となっているはずだ。今その瞬間に配信を視聴しているのはあなただけだ。あなたがNobody.liveにアクセスするその瞬間まで、誰も見ていなかった配信が表示されているのだ。

ランダムに配信のサムネイルが表示される。すべて視聴者は0人だ。(nobody.liveよりスクショ)

 サイトの使い方は単純だ。右上にある「new streamer」と書かれた緑のボタンを押すと、違う配信者がランダムに表示される。また、画面下部には配信のサムネイルが並んでおり、クリックするとその配信を開くことができる。いずれも視聴者が0人の配信だ。

 Twitchはゲーム配信がメインのプラットフォームなので『グランド・セフト・オート』や『FIFA』シリーズなど人気のゲームの配信が多く、冒頭にも述べた通り「とりあえず配信している」という人が多い。大多数の配信は無言で、カメラも付いていない、本当にただゲーム画面が映っているだけのものだ。

 しかし、Nobody.liveはまれにユニークな配信者との出会いをもたらしてくれる。暖炉の前で真剣に朗読をする男性、一人で延々とターンテーブルを回し続ける凄腕のDJ、TRPGをプレイする5人のおじいちゃんの配信などだ。未開の地で旅をし、突然見たこともない景色に出会うような、何が出てくるかわからないところがNobody.liveの魅力だ。

 サイトを製作したJack Kingsman氏は誰にも見られることなく、空白のチャット欄をたまに確認しながら一人でトークを続けている「その他大勢の配信者たち」に親近感を抱いていたそうだ。製作のきっかけについて「去年の11月、コロナ禍でどこにも行けず友人にも会えない時間が続いて、ひどく孤独を感じていたんです」「そんな時に、誰もいない劇場でパフォーマンスをしている孤独な人の観客を0から1に変えるというのを思いついて、とても美しいアイデアだと思ったんです」と語った。

 プログラマーであるKingsman氏にとって、Nobody.liveを作ること自体はとても簡単だったそうだ。「Twitchには素晴らしいAPIがありますからね」と話し、実際の仕組みについて「今行われてる配信のリストを呼び出して、視聴者が0の配信だけを抽出するだけで、すごく単純な仕組みですよ」と説明している。

 「私と同じように、孤独な夜を過ごしているどこかの誰かが、今も車の中から配信しているかもしれないんです。」と語るKingsman氏は、サイトにある思いを込めている。配信画面の右側にチャット欄が表示されることからも分かるように、たった1人の視聴者であるあなたがコメントを残すことで、偶然出会った視聴者と配信者で会話が繰り広げられ、孤独でなくなる事を期待しているのだ。

 Kingsman氏もこのサイトを通じて数人の友人を作ったそうだ。彼らは孤独な夜を共に越え、中には5人、15人と視聴者が増えた配信者もいる。ささやかな視聴者数だが、それでも彼らにとっては大きな成長だ。

 もちろん、彼らはもう「Nobody.live」には登場しない。このサイトはあくまでも「その他大勢の配信者たち」のためのものだ。それでも、まだ見ぬスターの原石が埋もれている可能性はあるのだ。そしてこのサイトが稼働している限り、その原石は「いつの日か誰かが0を1に変え、自分を見つけてくれるかもしれない」と希望を持ち続けることができるのだ。  

〈Source〉 https://www.pcgamer.com/this-website-only-shows-you-twitch-streams-no-one-else-is-watching/

https://nobody.live/

関連記事