『MOTHER』『FE無双 風花雪月』など発表の『Nintendo Direct』 注目トピックから考えるゲームカルチャーの課題
移植・リメイク・リマスターは、“過去からの回収“である。
もちろん今回のような往年の名作の復刻には、それぞれのゲームとしての面白さ、文化的な価値を後世に伝える意味において、大きな価値があると思う。そのことを認めた上で、私は疑問を投げかけたい。2022年上半期のゲーム業界の主な動向(少なくともNintendo Switchは、国内においてPlayStationと人気を二分するハードである)を伝える番組の約半分のトピックが、移植・リメイク・リマスターで構成されている状況はいかがなものだろうか。
続く復刻のトレンド化は、いわば“過去からの回収”であり、中長期的に考えたとき、ゲームカルチャーの密度を薄めていくものとも言える。草創期から発展期、安定期、成熟期を迎えるなかで、デジタルの浸透やコロナ禍などさまざまな理由から、より商業的で大衆的な文化へと変化してきた同カルチャー。作り手サイドの充実がない前提で、このまま同様のトレンドが続けば、20年、30年後の注目すべきゲームトピックは半分になってしまうことになる。その事態を見据えてもなお、再生産を手放しで喜ぶことができるだろうか。
近年のゲーム市場では、開発の複雑化・コストの増大化などが嘆かれる機会も多い。スペック至上で進んできたゲームカルチャーの末路が、コンテンツの密度の低下を招きかねないのだとしたら。メーカー・ユーザーの双方は、瞬く間に現行機が切り替わっていく極端な消費主義を考え直すべきなのかもしれない。ハードの移り変わりがなければ、移植やリメイク、リマスターは必要ないはずだ。
『Nintendo Direct 2022.2.10』のトピックには、いま考えるべきゲームカルチャーの未来が映し出されているような気がした。