お笑い好きがいま一番見るべきYouTube「ナイツ塙の自由時間」 M-1審査員・漫才協会副会長の片鱗を見せる

 「お笑い好きが今一番見るべきYouTubeチャンネル」として「ナイツ塙の自由時間」をオススメしたい。

 その名のとおり、基本的にはご飯を食べたり趣味であるドラマの感想を言ったりと、ナイツの塙宣之が自由に好き放題やるチャンネルなのだが、メインコンテンツとなっているのはやはり「漫才」。中田カウス・ボタンの中田カウスの名言で「コントも漫才」というものがあるが、塙宣之にとっては「YouTubeも漫才」なのかもしれない。

 送られてきた漫才の台本に塙宣之がガチ添削をする「漫才添削」シリーズはこのチャンネルでも一番のメインコンテンツ。若手芸人や一般人からネタを送ってもらい、読み上げながら「ここのツッコミの言い回しはもっとこうしたほうがいい」「1つ目のボケと2つ目のボケを入れ替えたほうが流れができて面白い」とM-1グランプリの審査ばりに添削していく。終始よく分からない台本やミルクボーイの当て書きを書いた台本に対しては「全部ダメですね」とネタごと全カットするなど一切の遠慮がない。しかも、ただ頭ごなしに否定するのではなく、時にはほかの芸人のネタを例に挙げながら、送られてきた台本がどうすればより面白くなるかを理論立ててアドバイスしていく。

 たとえば「夢のネタ」について書いた台本に関して「夢のネタはあまり良くないと言われている」としつつ、その理由について「夢にしてしまうとその状況がなんでもありになるのでツッコむ言葉がなくなる。漫才はボケをツッコミがどう捌くか、というのがひとつの見どころでもある」と評していて改めて「漫才」というものの奥深さを知った。

King&Princeへ、お礼のアンサー漫才作ってみた!【ナイツ塙】

 また「物」や「気持ち」など何かをもらった著名人に対し、感謝の気持ちを込めてお返しに漫才を作る「アンサー漫才」も人気企画のひとつ。GLAY、HIKAKIN、AKB48、King & Princeなど、その芸能人の情報を詳しく調べながらリアルタイムでナイツの代名詞「ヤホー漫才」の台本を作っていくのだが、驚くべきはそのスピードと完成度。流石に編集はしているのかもしれないが、たった10分の動画で3分以上の漫才を作り上げてしまう。しかも、ただ単に思いつくままボケやツッコミを詰め込むだけでなく、フリとオチの流れがその場で考えているとは思えないほど。特に震え上がったのが、King & Princeの神宮寺勇太の「アンサー漫才」にて「木村拓哉に憧れてジャニーズに入った」「多趣味」という2つの情報を組み合わせ、「趣味がたくさんありまして、車・バイク・Cocomi・古着・Koki・ギター・静香・植物などです」と木村拓哉の家族の名前を入れ込むボケを一瞬で固めたその脳の回転の速さに浅草漫才協会副会長の片鱗を見た。

【マジでむかつく!】東京03飯塚が大嫌いな「伏線」とは?【ナイツ塙】

 また、時にほかの芸人を招いての本気対談も面白い。メイプル超合金・安藤なつをゲストに、誰かの見た目や特徴を笑いにする「容姿ネタ」について語った動画では、安藤本人が「容姿ネタでウケてるのは嬉しい」と言いながらも近年の容姿ネタがウケなくなることについての難しさを話し、塙も「直接的に言うのはセンスがない」「お笑いの中でも相当経験とセンスのある人しか容姿ネタは扱えない」と改めて容姿をネタにすることへのギャンブル性を語っていた。

 東京03・飯塚悟史ゲスト回で「伏線ネタ」のあざとさについて語っている動画も、普通のネタをやってるのに、前半で出てきたキーワードを後半のボケに入れるだけのネタが客からやたら「オー! 伏線回収だ!」と持ち上げられてる芸人への不満を口にしつつも、途中から互いのネタ作りに対するスタンスの話になり、最終的には、東京03結成前の飯塚と豊本明長のコンビ・アルファルファ時代に豊本が何気なく放った一言が、後々東京03結成に重要な意味を見出すという「リアル伏線回収トーク」に帰結していく流れは『進撃の巨人』を読んでいるかのような感覚に陥った。

 冒頭でこのチャンネルを「お笑い好きが今一番見るべきYouTubeチャンネル」と紹介したが、芸人やお笑いファンのみならず「創作」に関わる全ての人間へのヒントが転がっている素晴らしいコンテンツだと思った。

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