格ゲー界におけるウメハラの功績 『獣道4』を前に振り返る

 2010年に日本初のプロ格闘ゲーマーとなったウメハラこと梅原大吾。2021年でも第一線で活躍し、格ゲーコミュニティを牽引する人物だ。

 2021年10月30日に開催された『CAPCOM Pro Tour 日本大会 3』では優勝を果たし、今なお世界トップの実力者であることをコミュニティに見せつけた。

 本記事では、格ゲー界におけるウメハラの功績を振り返り、コミュニティの注目を集めるビッグイベント『獣道4』を紹介する。

生きる伝説

 ウメハラがプロ格闘ゲーマーになったのは、彼が29歳の時の出来事。しかし、15歳の時には全国大会優勝を果たし、17歳の時には世界チャンピオンのタイトルを獲得している。2021年には40歳の誕生日を迎えているが、いまなお最前線で活躍するウメハラは、まさに「生きる伝説」だ。だが、格ゲー界におけるウメハラの功績を表現するには「生きる伝説」という言葉ですら不十分だろう。

絶対王者

 昨今、格闘ゲームの大会で最も好成績を収めているプレイヤーはウメハラではない。それでも「格闘ゲーマーの絶対王者は誰か」という問いがあれば、ウメハラの名前は必ず挙げられるだろう。それは事前に対戦相手が決まっている試合形式において、ウメハラは絶対的な実力を見せつけ続けているからだ。そして格ゲー界では、その試合形式こそが至高だと考える風潮がある。特定の対戦相手に焦点を絞った試合でこそ、ウメハラの真骨頂は発揮されるのだ。

 その真骨頂は、2021年11月29日の『ストリートファイターリーグ:Pro-JP 2021』の第12節、ぷげら戦でも見られた。ぷげらは「バイソン」というキャラクターを巧みに操るスペシャリストだ。「バイソン」はウメハラが操る「ガイル」にとっての天敵であり、直近の戦績ではぷげらがウメハラを圧倒している。だが、この日の試合に向けてウメハラは徹底的にぷげら対策を仕上げることで、激闘を制した。この結果は多くの格ゲーファンの下馬評を覆すと同時に、ウメハラの真骨頂を知らしめるものとなった。

エンターテイナーとしての存在

 ウメハラは屈指のプレイヤーであると同時に、エンターテイナーとしてもファンを楽しませる。プロ格闘ゲーマーの多くは動画配信に注力しており、その傾向は新型コロナウイルス感染拡大以降顕著になった。中でもウメハラは動画配信に熱心に取り組んでおり、ほぼ毎日ファンと交流を取っている。格闘ゲームはもちろん、ほかゲームをプレイする様子も配信しており、雑談も人気の配信テーマだ。イベントを配信することもあり、その内容はトークショーやチャリティなど多岐にわたる。

 いかにイベントが多種多様かを表すいい例が、早食い対決だ。このイベントではほとんどゲームは登場しない。大食い選手で有名なMAX鈴木と、ウメハラ率いるプロ格闘ゲーマーチームが早食いで勝負するという内容だ。ゲームの大会ではクールな表情と華麗なプレイを見せるウメハラが、鬼の形相でカップラーメンを早食いするという何とも貴重な映像が収められた。

MAX鈴木さんとの早食い対決!パート2Speed-Eating Face-Off w/ MAX Suzuki! Part 2

ウメハラ超え

 プロ格闘ゲーマーが絶対王者の地位を築くのは困難を極める。仮に世界大会でどれだけ優勝を量産しても、絶対王者にはなれない。というのも、格闘ゲームコミュニティでは「ウメハラとの直接対決を制してこそ絶対王者だ」という暗黙の認識があるのだ。つまり「ウメハラ超え」は、絶対王者に要求される条件の1つなのだ。

 2018年、「ウメハラ超え」に挑んだ男がいた。その男とは、かつてウメハラと同じチームに所属していた「ときど」だ。2018年のときどの活躍は目覚ましく、あらゆる世界大会を制覇していた。「いま一番強いプロ格闘ゲーマーは誰か」、そんな問いがあれば誰もが口を揃えて「ときど」の名を挙げただろう。しかし、ときどが絶対王者の地位を築くためには、あとひとつ成し遂げねばならないことがあった。それが「ウメハラ超え」だ。

 そしてその舞台は整えられた。ウメハラが自ら主催する『獣道2』というイベントで直接対決が発表されたのだ。『獣道2』では、ウメハラとときどの両選手が入念に対策を積み、当日をむかえることになる。

 事前準備がものを言う『獣道2』のルールは、まさにウメハラの真骨頂が発揮される試合形式だ。ウメハラがこの形式で負けたことはない。

 しかし「それでもときどなら」そんな意見も多く、勝者の予想は困難を極めた。

 この一戦はただのトッププレイヤー同士の対決ではない。もしときどが勝てば、ウメハラを中心とした格ゲーの歴史は更新され、ときどによる新たな時代が幕を開けるからだ。まさに天下分け目の決戦だった。

 そしてウメハラはときどを圧倒してみせた。それ以降、「ウメハラ超え」を果たした者は一人もいない。

Daigo Umehara Presents: Kemonomichi 2 - Daigo vs Tokido PV

獣道4

 先述のとおり『獣道』はウメハラ自身が主催するイベントだ。獣道では複数のゲームタイトルで因縁めいたマッチアップが組まれる。勝者が得られるのは「実力の証明」だが、プレイヤーは最も大切にしているプライドを賭けることになる。

 だからこそ選手は万全を期して試合に挑むのだ。そんな『獣道』の4回目が2021年12月30日に開催されることが発表された。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、なかなか実現されなかった『獣道4』の開催にコミュニティは歓喜した。気になるマッチアップは順次発表されるとのこと。因縁が最重視される『獣道』なら、必ずコミュニティが満足するマッチアップが発表されることだろう。

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