地図に存在しない国を旅するYouTuber 700万人を魅了するその企画力とは?

 各地を旅行してその様子を届ける旅行系YouTuberは、私たちの知らない世界を届けてくれる。まるで自分が旅行している気分になれるので、コロナ禍で外出の機会が減った方も、旅行系の動画をよく視聴しているのではないだろうか。

 国内では「おのだ/Onoda」や「スーツ 旅行 / Suit Travel」などの旅行系YouTubeチャンネルが有名だが、海外にも目を向けるとおもしろいチャンネルがある。特に、ずば抜けた企画力で多くの視聴者を虜にしているのが「Yes Theory」というチャンネル。複数人で運営するクリエイター集団で、チャンネル登録者数716万人という人気を誇っている。

50 Hours In A Country That Doesn't Exist On A Map (Transnistria )

 最近投稿された動画だと「50 Hours In A Country That Doesn't Exist On A Map (Transnistria )」が一際興味を惹かれる。地図上に存在しない国「トランスニストリア」で、50時間過ごすのが本動画の趣旨。公開日は2021年10月12日で、再生回数は約334万回を誇る。

 トランスニストリア(別名:沿ドニエストル・モルドバ共和国)は、国連から国として承認されていないため、事実上“地図上に存在しない”未承認国家となっている。1991年のモルドバ独立に先立ち、ドニエストル川東岸のロシア系住民が反発して「沿ドニエストル共和国」を宣言して以降、現在まで未承認国家が続いている。

 モルドバ政府の力が及んでいないため、日本人旅行者がトランスニストリアで事件・事故に遭っても救済できない可能性がある。そのため外務省は、トランスニストリアを危険レベル「レベル1(十分注意してください)」に設定しており、渡航の際は十分に注意するように警告している(旅行を禁止しているのではない)。

 このように聞くと何やら危険な国のように聞こえるが、トランスニストリア内はいたって普通で、平和そのもの。飲食店や床屋、教会など生活に必要な施設が揃っており、どれも洋風な雰囲気で美しい街並みだ。また特筆すべきは、その心温かな精神風土にある。異国の投稿者に対して積極的にコミュニケーションを取り、またリンゴやストロベリー、キャンディなどを無料であげようとする。行動に余裕があり、多くの人がそこで幸せに暮らしているのだろう。

 Yes Theoryのチャンネルでは、ただその土地に訪れるのではなく、その街の生活に深く馴染もうとする。トランスニストリアでも、実際に自宅に訪れてもてなしてもらったり、一緒にスポーツを観戦して盛り上がったりしている。このような、その土地の“深い部分”まで動画で届けてくれるのが、Yes Theoryの何よりの魅力なのだ。

50 Hours Inside the Most Radioactive Place on Earth

 Yes Theoryは、私たちが目にしたことのないような異国の土地に訪れる動画を多く投稿している。今年に入って特に興味深かった動画の1つに「50 Hours Inside the Most Radioactive Place on Earth」がある。2021年6月7日公開の動画で、再生回数は約366万回。ウクライナ共和国にある小さな町、チェルノブイリを訪れる企画だ。チェルノブイリといえば、1986年に発生した、史上最悪の原子力発電所事故で有名な場所だ。Yes Theoryはチェルノブイリに訪れ、現在の街の様子や、そこで暮らす人に密着した様子を視聴者に届けてくれる。

 Yes TheoryはYouTubeの強みを十分に活かし、私たちがふだん目にすることのない土地の様子を動画で届けてくれる。いつも期待以上のコンテンツを投稿しているのが、チャンネル登録者数716万人を誇るYes Theoryの人気たる所以だろう。

関連記事