「俺たちがやっているのは『いたずら』じゃない」電撃ネットワークがYouTubeに殴り込みをかけた理由
YouTube動画は総合格闘技に近い
――早速、手応えを感じているわけですね。
南部:10月から始めて、いろいろと動画を上げているんですけど、自分たちとしてはとても楽しいですね。お客さんを目の前にして笑いをとるっていうのとは、ちょっと違っていて。お客さんがいない分、身体の代償が大きいようなことも、結構やれたりするんですよね。こないだも、打ち上げ花火百連発とかをやったんですけど、俺たちからすると、やっぱりすごく楽しくて(笑)。まあ、やった本人は、次の日、身体中が痛くて大変だったみたいですけど。
リチャード:まあ、僕のことですけど(笑)。
南部:そもそも、打ち上げ花火を上げるなんてことは、普通の会場ではできないじゃないですか。だけど今は、工場の中で撮影をしているので、誰に気遣うこともなく、いろんなことができるんですよね。
ダンナ:もう、好き放題やっています(笑)。
南部:だから、自分たちの発想みたいなところも、これまでとはちょっと違ってきているというか、「この場所で、どんなことをやろうか?」となって。電撃ネットワークを始めた頃は、ネタ作りのときに……いろんなところに書いてある「これはやっちゃいけません」というものがヒントになっていたりしたんですよね。やっちゃいけないんだったら、それをやってみたらどうなるんだろうっていう。それで正露丸の一気飲みとか消火器をわーって浴びたりとか、そういうことをいろいろやっていたんですけど、今はどのぐらいスケールの大きいことがやれるのかっていうのを考えるんです。たとえば今、ランディーが静電気で電球を点けるというネタをやっていますけど、それでどれぐらい大掛かりなことができるのかとか。そういう意味でも、楽しみがとても増えていますよね。
ダンナ:そう、電撃ネットワークは、最初にグループを組んだときから、練習が大嫌いなんですよね。だけど、実験は大好きっていう(笑)。
――(笑)。
ダンナ:新しいネタを考えるときも、「これを使ってこうやったらどうなる?」とか「どこまで痛い?」とか、練習はしないのに、実験だけはいろいろやっていて(笑)。だから今は、デビュー当時というか、グループを組んだ頃に戻ったような、そんな楽しさがあるんです。
ギュウゾウ:あと、動画ならではの面白さってあるじゃないですか。途中でストップをかけて、もう一度見返したり、スローで再生したりできるので。それはそれで、結構面白かったりするんですよね。
南部:まあ、花火を人に向けて、わーって騒いだりとか、その程度で面白がっているのは、どうなのかなっていうのは、ちょっと思いますけど。
ダンナ:えっ、ここでダメ出しするんですか(笑)。
ギュウゾウ:いきなり、取材の趣旨が変わってきちゃいますけど(笑)。
南部:や、ちょっと危険なことをやれば、みんなが食いついてくるとか、そういう感覚ではないってことですよね。それぐらいだったら、誰にでもできるじゃないですか。やっぱり、誰にも真似できないこと、真似しようと思わないことをやるのが、自分たちの仕事だと思っているので。そう、俺たちがやっているのは、「いたずら」じゃないんですよ。
――そのあたりが「電撃イズム」というか、他のYouTuberたちとは違うところだと。
南部:ええ、そうですね。
ダンナ:まあ、今ギュウちゃんがやっているサソリを使ったネタとかも、いちばん初めは「日本で初めてサソリに刺される男」っていうネタで考えていたりしたので(笑)。
南部:そっちのほうが面白いですよね。口に入れるだけなら、誰でもできるというか、サソリに刺されたら、どれぐらいで毒はまわるのかなとか、どれぐらい腫れるのかなとか、やっぱりそういうものが見たいですよね。
ギュウゾウ:いやいや、ちょっと待ってくださいよ(笑)。
――(笑)。いずれにせよ、誰にでもやれるようなことは、電撃ネットワークでやることではないと。
南部:そうですね。自分たちが普段ショーでやっているのは、あくまでもショーであって……その期間が1ヵ月だったら、1ヵ月やれるようなショーなので、どうやって怪我しないように最後までやるかとか、やっぱりそういうことも多少は考えるわけです。だから、自分たちがショーでやってきたのは、一種のプロレスみたいなもので、UFCのような総合格闘技ではないんですよね。だけど今、動画でやっているのは、割と総合格闘技のほうに近いのかなって思います。
――そこで何が起きるかは、やっている側にもわからないというか。
南部:まあ、そもそも自分たちは、もう30年以上もやっているので、いろいろ感覚が麻痺しているところがあるんですよね。さっきの花火の話じゃないですけど、普通の人は花火を向けられただけで嫌だなと思うかもしれないけど、花火ぐらいは大したことないよって、もう自分たちは思い込んでいるので(笑)。それはそれで危険なのかもしれないけど、一流の格闘家は、その一撃でどれぐらい相手にダメージを与えることができるのかを考えるわけじゃないですか。自分たちもそれと同じというか、そこが他の人たちとは全然違うのかなとは思いますよね。