Appleの影響を受けていた? 『BALMUDA Phone』が描くブランドの未来を考える
『BALMUDA Phone』の驚きはどこにある?
バルミューダが、創業時から大切にしているのが、ほかにはない体験だ。ある分野の常識を変え、新たな体験を届けることで、ユーザーを驚かせてきた。しかし本作は、これまでの製品に比べて、驚きが少ないように思える。
そしてそれは、発売を心待ちにしていたユーザーにも波及し、前述した価格を含めて賛否両論を巻き起こした。では、『BALMUDA Phone』が届けるべき、驚きとはなんだったのか。順当に考えれば、バルミューダ製品との連携だろう。
2013年にバルミューダは、スマートフォンと家電を連携する遠隔操作アプリ『UniAuto』をリリースしている。*2 (現在対応製品は発売していない)
本作にも『UniAuto』に近いアプリを搭載していれば、少なくともユーザーにとってわかりやすい驚きを届けられたかもしれない。特に、バルミューダ愛用者は、家電との連携を望んでいたはずだ。しかし、『UniAuto』の経験もあってか、本作での連携機能は実現しなかった。
IoTは、5Gの普及によって、さらに拡大していくことが予想されている。そこで現段階から、独自の連携を実現しておけば、他社との違いをより明確にできたはずだ。賛否両論ある端末価格についても、納得する意見が多かったのではないだろうか。
本作は、あくまでBALMUDA Technologiesの第1弾であり、継続的に製品を開発していく方向性だという。そこで今後、登場する可能性が高いのは、家の中ではなく、外における連携、つまりウェアラブル製品のように思える。
たとえば、スマートウォッチやスマートバンド、ワイヤレスイヤホンなどの製品がこれに当たる。前者は、独自アプリと親和性が高く活用しやすい。後者は、寺尾氏自らのルーツである音楽に関連したものであり、すでにワイヤレススピーカー『BALMUDA The Speaker』を発売していることから期待が持てる。
ウェアラブル製品は、バルミューダのデザインや哲学を反映しやすい点から、相性のいい分野だ。しかし、ウェアラブル製品は一般に普及しており、ありふれた連携や見慣れた機能では、新たな体験は提供できないだろう。
将来的に、スマートフォンやタブレットのような端末に力を入れるのか。それとも、ウェアラブルのような周辺機器に力を入れるのか。あるいは、独自アプリをバルミューダ以外のユーザーにも展開していくのか……。
家電との連携を新たな体験の柱にしなかった今、どんな驚きをユーザーに提供していくかが、BALMUDA Technologiesを左右するカギとなるだろう。
バルミューダを超える覚悟
ロゴは企業の顔であり、信頼の証でもある。バルミューダは、創業時から何度かロゴを変えたが、どれも微調整程度だった。しかし今回、BALMUDA Technologiesの立ち上げに合わせて、既存のモダンなロゴは引き継がず、サインのような新しいロゴを採用した。
楽器メーカーの「Fender」や、アンプメーカーの「Marshall」を想起させるロゴは、元バンドマンである寺尾氏のルーツを感じさせる。一見、バルミューダと認識できないのは痛いが、それだけの覚悟が見える転換といえるだろう。
ロックバンドの世界では、ファーストアルバムは名盤、といわれることが多い。BALMUDA Technologiesの『BALMUDA Phone』は、果たして名機となれるのだろうか。国産スマートフォン市場に、新たな風を巻き起こしてほしい。
(Source)
*1 https://tech.balmuda.com/jp/phone/story/
*2 https://www.balmuda.com/jp/uniauto/
https://www.balmuda.com/jp/
https://tech.balmuda.com/jp/
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2021/20211116_01/