『メガテン5』に感じた“RPGのこれから” 復権のカギは次世代機に?

 2021年11月11日、『真・女神転生Ⅴ』(以下、『メガテン5』)が発売となった。

 シリーズ8年ぶりのナンバリング最新作として、かねてから大きな注目を集めてきた同タイトル。『メガテン5』のインプレッションから、RPGの未来を考える。

RPG全盛期に誕生した異色の傑作『真・女神転生』シリーズとは

『真・女神転生V』PV01

 『真・女神転生』は、1992年より続くアトラス開発・発売のRPGシリーズだ。プレイヤーは現代の東京を模した世界を舞台に、「悪魔」と呼ばれる敵モンスターを使役し、世の混沌を解決へと導く。ゲーム中に敵として登場する悪魔は、一部の例外を除いてほぼすべてを味方に引き入れることができ、所有する悪魔同士の合体も可能。各作品ごとに総勢200~300体前後の悪魔が登場するため、思い入れや強さ、メンバーのバランスなど、好みの条件でパーティーを構成できる。

 また、勧善懲悪だけにとらわれないシナリオも、同シリーズの魅力だ。混沌の中で登場人物たちは、自身の性格や思想、考え方などに基づき、世界を救うためのそれぞれの答えへと到達する。物語の展開は、プレイヤーの選択によってさまざまに変化するため、当初は主人公と親しい関係にあった者が、最終的には敵対勢力となっているケースも少なくない。RPGの全盛期に誕生したシリーズにあって、斬新で画期的なシナリオ・システムを取り入れていたこと。それが『真・女神転生』がコアなファンに愛されるシリーズとなれた所以だろう。

 その5作目となる『メガテン5』は、前作『真・女神転生Ⅳ』以来、8年ぶりとなるナンバリング最新作。2017年に開発が発表されてから4年の時を経て、ようやく発売へとこぎつけたファン待望のタイトルである。直近では、『真・女神転生Ⅲ』のリマスター作品『真・女神転生Ⅲ NOCTURNE HD REMASTER』(2020年10月29日発売)も大きな話題を集めた『真・女神転生』シリーズ。第5作は未来へのバトンをつなげていけるだろうか。

グラフィックの進化が強調する『メガテン』のアイデンティティ

 『メガテン5』を実際にプレイし、私が最初に感じた同タイトルの優位性は、悪魔のグラフィックが美しくなった点だった。

 先の項では触れなかったが、『真・女神転生』シリーズのひとつの魅力に、イラストレーター・金子一馬氏の手掛ける悪魔絵がある。『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』といった人気RPGのそれとは一線を画する同氏のキャラクターデザインは、いまやシナリオ・システムと並ぶ、シリーズの顔だ。その魅力が現行機のスペックで余すところなく表現されていたこと。その点に多くのファンが8年ぶりのシリーズの復活を、肌で感じたのではないだろうか。

 前作『真・女神転生Ⅳ』が発売されたのは、2013年。対応ハードは、当時最先端の携帯機であるニンテンドー3DSだった。もちろん同作も「シリーズ10年ぶりのナンバリング」として、映像面での進歩は感じさせてくれていた。しかし、今回の第5作から受けた悪魔グラフィックの美麗化からは、そのときとはまた違った感覚を受け取ったというのが正直なところだ。

 一方で、キャラクターデザインの面では、グラフィックが精緻となったからこそ、金子一馬氏が手掛けた『真・女神転生Ⅳ』以前の悪魔と、(アトラスのイラストレーター・グラフィックデザイナーである)土居政之氏が新たに手掛けた悪魔とのあいだに、わずかな雰囲気の違いを見てしまった。金子氏の悪魔デザインがシリーズの代名詞であるがゆえに感じた小さな違和感は、少し残念だったと言わざるを得ない。

 また、操作まわりのUIが(一部を除き)プレイヤーに寄り添っていた反面、それぞれのコマンド入力にある多少のレスポンスの遅延や、ロードなどがゲームのテンポを悪くし、(悪い意味での)もっさり感を演出していた点もマイナスポイントだろう。

 RPGにおいては、処理落ちや入力感度、ロードの長さなどに関して、ハードのスペックが求められるほかのジャンルほどはシビアではない状況があるが、同ジャンルにとっては、これらがゲーム性以外における数少ないUXであり、極めて重要なユーザビリティのひとつだ。もちろん上記の問題の原因すべてが、単純に開発の怠慢というわけではないかもしれない。しかし、多くのファンが待ち望んだタイトルであったからこそ、「全力でゲームの世界に没入できる完成度で遊びたかった」というのが、プレイヤーたちの本音であるに違いない。

 古き良きRPGの流れを汲む『メガテン5』だが、狙いどおりのゲームデザイン以外の部分で評価を落としてしまうのは、いささか寂しくもある。後者の問題については、今後のアップデートで解消に向かうことを信じたい。

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