『AKIRA』の世界を実現する手がかりに? 車窓サイネージ「Canvas」の三浦純揮が描く、都市と広告の未来図
空間をメディア化すれば、街全体がエンターテイメントになる
ーー今後はタクシーアプリ「S.RIDE」とも連携されていくとのことですが、それが実現したらどんなことがしたいですか?
三浦:タクシー利用者の平均乗車時間は18分と言われているのですが、その中でなにかしら体験となるものを提供することですかね。たとえば“移動する映画館”みたいなことをするならば、話題作の冒頭10分を車内で見られるようにしたりとか。タクシーの1番の良さは、A地点からB地点までピンポイントに行けることだと思うんですけど、それだけじゃない付加価値も生み出せるはずで、さらになにを体験するかをユーザーが選択できる状態を作ることができればベストですね。
最近では自動運転技術がどんどん進化していて、いずれ運転する必要がなくなるので、そうなったら可処分時間でいろんなことができるじゃないですか。タクシーにしても、一般の車にしても、車内での価値ある体験を追求する動きは今後も加速していくと思います。
ーー車内でできた可処分時間にアプローチするサービスを作っていくということですね。
三浦:まさに僕らの事業のコンセプトは、可処分時間なんです。「Canvas」は少し違うんですけど、ヘアサロン専門サイネージの「COVER」や、オフィス喫煙所サイネージの「BREAK」などがそうですね。広告って1回見ただけだとあまり印象に残らないけど、1日7回も見ると頭にしっかり残って、次の日にも見たらさらに定着しますよね。こんな風に接触回数と時間はすごく大事なんですが、美容室の場合は平均滞在時間が120分で接触回数は4回ほどです。オフィスの喫煙所は、1日平均7〜8回、そして1回5分ぐらい滞在する場所なんです。そういう可処分時間を持っている場所をメディア化するのが一つの指針ですね。
ーーそうなると街に広告があふれて、ユーザーにしつこさを感じさせてしまうなどの懸念も出てくると思いますが、その点についてはいかがでしょうか?
三浦:ありとあらゆるスペースが媒体化していく流れは今後も止まらないと思うので、街には広告でさまざまな光景が広がると思います。そこで重要なのは、場所や手段に適したクリエイティブ・コンテンツの開発だと考えています。みなさんに広告を楽しんでいただけるような世界観を創造していきたい、という気持ちですね。
ーー先ほどあげていただいた『AKIRA』や『ブレードランナー』の世界にも広告があふれていますよね。
三浦:めちゃくちゃあふれてますよね。街全体がエンターテインメント化してる状態というか。たとえばニューヨークのタイムズスクエアは広告やサイネージの集合体ですが、それが観光地化していて、みんな写真を撮るじゃないですか。日本だと渋谷のスクランブル交差点がそうだと思いますが、『AKIRA』のような3D広告なんかがあるとさらにおもしろいことになりそうですよね。
ただ技術的には課題もたくさんあって、海外でもまだほとんど事例がないんです。ちょうどいま、空間をメディア化する計画について話を進めていて、いくつかの会社さんに声をかけているところなんですが、かなり高度な技術が求められるのでみなさん難しいと言っていますね。巨大なモニターに映像を映し出すことはできるんですが、それを立体的に見せるのが厳しいようで。それでも諦めずに、来年あたりから本格的に着手したいです。
まずは「Canvas」の導入台数を増やして、3000の広告が街を走るのを当たり前の景色として定着させること。そしてその後は、タクシーの枠を超えて、広げていければと思います。
■「Canvas」2021年グッドデザイン賞受賞概要
1957年創設のグッドデザイン商品選定制度を継承する、日本を代表するデザインの評価とプロモーションの活動であるグッドデザイン賞を「THE TOKYO MOBILITY GALLERY Canvas」が受賞。
サービス名:THE TOKYO MOBILITY GALLERY Canvas
デザイナー:ニューステクノロジー クリエイティブディレクター 滝沢圭介
受賞ページ:https://www.g-mark.org/award/describe/52765?token=pzoB7mMnhK
コンセプトNote:https://note.com/newstechpr/n/n9625e3787976
https://www.wantedly.com/companies/newstech2/post_articles/353662
■「S.RIDE」連携『ディズニープラスタクシー』が期間限定で都内に登場
11月1日より「S.RIDE」配車連携プロジェクト第一弾として新ディズニープラスとのタイアップが決定した。新しく生まれ変わったディズニープラスの世界観を最大限に体現した『ディズニープラスタクシー』が都内を走行する。『ディズニープラスタクシー』では、車両全体のラッピング(一部内装)から「Canvas」を活用した窓ガラスへのクリエイティブ投影、モビリティメディア「GROWTH」による車内コンテンツの放映に加えて、乗車カードを数量限定で配布。「S.RIDE」より『ディズニープラスタクシー』を車両指定し、配車することができる。