空間演出ユニットhuez「3.5次元のライブ演出」第六回

XRライブの鍵は「自由度の取捨選択」? 初音ミク、4s4kiなどのライブ演出事例から考える

自由度の取捨選択を司る「演出」

――これまで、リアルとバーチャルを結ぶライブ演出について、特に照明演出と新たな撮影技法についてお聞きしてきました。これからも現場ではこういった新たな技術が生まれ、発展していくかと思うのですが、今後、こういったXRライブはどのように発展していくのか、またはhuezさんが注目している技術や領域があったら、今後の展望も含めてお聞かせください。

としくに:ここから先、ワクチンがある程度行き渡ったところで、生ライブがめちゃくちゃ増えると思うんですよ。「コロナが落ち着いてからプロジェクトを進めていこう」って各所みんな思っているはずですし、例えば音楽フェスとかってほぼ2年間できていないので。だから多分こういうバーチャルライブ・配信ライブとかの需要は一旦落ち着くのかな、と思っています。ただ、VRやXR、仮想空間まわりの技術はコロナ前から考えたら10年くらい一気に進んだと思うから、衰退することはなくて、速度が落ちても変わらず発展すると思います。特にさっき言ったXRライブには結構希望があると思っていて、それはリアルのライブじゃできないことができるから。

 コロナが始まった頃から今まで起きていることって、すごくざっくりいうと「リアルをどんどんバーチャルにぶち込んでいく」みたいな流れだったと思うんですけど、コロナが落ち着いてきたら今度は逆に「バーチャルがいかにリアルにめり込むのか」を考える時代が来るんじゃないかと思います。リアル体験の中にバーチャルがミックスしていくような時代。だからhuezとしては、リアルライブもバーチャルライブもシームレスに行き来して演出できるチームであろうと思います。でないと面白くないので。

 この前ayafujiくんとも話してたんですけど、clusterとかVRchatみたいな、アバターをまとって空間を歩けるブラウザサービスの上でライブをできないか調べたら、どうやらできそうだと。それこそOculus被って、自宅からライブを見に行けるような。これはやりたいですね。あと、壮大な夢としていつかやりたいのは、バーチャルフェスですよね。『ROCK IN JAPAN FES』くらいの広さのバーチャル空間を作って、メインステージ、サブステージ、新人、ってステージを分けて、ステージに近づくとそこの音がどんどん大きくなっていく……みたいな構造は作りたいです。

――フェスを作る、ってことですね。

としくに:そう。やれたら相当面白いなと思ってるんですけど、例えばこの間の4s4kiさんのライブって30分なんですよ。30分で死ぬかと思ったくらい大変だったんですよ。それを考えると相当大変。ステージごとに空間も雰囲気も変えなきゃいけない、けど全体の美術の調和は取れていなきゃいけないし……もしリアルでフェスをやるってなったら、装飾する美術屋さんっていう方が絶対にいて、フェス全体の雰囲気を揃えるためにセットを組んでいく、そのレベルまでやると地獄みたいな工数がかかりますよね。3か月間でステージ組んでブッキング入れて当日は4つのグリーンバックステージを借りて全部のセンスを合わせる……とかって思うと、huezがあと5倍くらいの規模じゃないとできないです。

 少し脱線しますが、そういう意味では去年、イベンターさんたちは絶対大変だったはずです。バーチャルにいた人のライブを生の現場、ライブハウスでやるってときに様々なレギュレーションがあって、コロナ対策もしながらそういうイベントを組んでいた。しかも今後もしXRライブフェスをやるときにも、絶対イベンターさんや制作さんって必要なんですよ。これって今、ほとんど業種として存在してなくて。4s4kiさんのライブを作っているときに尚更思ったんですけど、XRライブの制作さんって、MVの制作とライブの制作がどちらもできる人じゃないといけないんですよね。サウンドチェックとかバミりとか、普通のライブでも絶対にやることをした上で、ライブ本番はMV撮影みたいな進行になる。今まで生ライブの撮影って、割とできあがってるライブを上から撮ってたと思うんですけど、XRライブってMVのように撮り続けないといけないんですよ。だから作る側がカメラチームのタイム感と生ライブのタイム感をどちらも持っていないといけない。

――音も映像、いずれにも精通している必要がありますね。

ayafuji:XRライブの場合はそこにもう一つ、ソフトウェア開発が入ります。

としくに:普通のフェスでいうところの舞台監督や大道具のポジションに、エンジニアとかプログラマーが入るんです。

ayafuji:で、当日まで完全にソフトウェア開発・ゲーム開発みたいな感じで進めていくんですけど、

としくに:当日になると、突然ライブとMVの撮影会になって地獄みたいなことがおきる。

ayafuji:それまで仕切ってた人と全然別の人が、別の想像力で仕切らないと回らないので。

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