声とテクノロジーで変革する“メディアの未来”(第六回)

ゆとり女子2人のポッドキャストが“ユルい快進撃”を繰り広げるまで 『ゆとりっ娘たちのたわごと』かりん&ほのかに聞く

なにもやらない方が傷つかない。それでも、やりたいことをやる

ーー番組を続けていく中で、お互いに変わったなと感じることはありますか?

かりん:ほのちゃんは結構変わったんじゃないかな。本質は変わってないんですが、人に見せる部分が変わったと思います。私が出会ったときは“仕事命”って感じでした(笑)。Podcastを始めたときも、「しゃべりがうまくなりたい」って言っていた記憶があります。

ほのか:そうだっけ(笑)。でも、うまくなってないな……。

かりん:社会人3年目でバリバリ仕事をしたい時期だったんだと思います。でも、番組をやっていくうちに、年齢を重ねていって、生き方とか、人生そのものについて考えるようになっている気がして。“どうやって仕事をうまくやるか”よりも、“どうしたら今後の人生を楽しく暮らせるか”みたいなもっと根本的な話に興味をもち始めたように感じます。

ほのか:最近リスナーさんに「自我が芽生えた」と言われたんですが、自分の考えを1回噛み砕くようになりましたね、前は人の言葉で考える癖があったので。「うまくしゃべれるようになりたい」と言ったのも、それが悩みだったからだと思います。考えるのは好きなのですが、自分の気持ちを人に伝えるのがあんまりうまくなくて。でもかりんちゃんと話しているうちに話せるようになって、言葉にするのが怖くなくなりました。

かりん:もともと自分の考えがしっかりある人なんですが、あまり外に出さないタイプなので、そんなに深く考えていたなんて知らなかった、ということがいまだにあります(笑)。

ーーかりんさんへの印象の変化はありますか?

ほのか:最初はお互いをあまり知らなかったので、何か提案するにも気を遣うというか、緊張していました。でもかりんちゃんは「これやりたい」って言うと結構のっかってくれて、なんでもおもしろがってくれるとわかって。こんなにアクティブだと思ってなかったので少し意外でした。曲作りなんかもしましたし。

かりん:アイデアを形にすることはもともと好きなのですが、『ゆとたわ』を始める前は、完璧にかっこいいものじゃないと世に出しちゃいけないと思い込んで、尻込みして何もできなかったんです。でも『ゆとたわ』の世界が出来上がってからは、完璧じゃなくてもとりあえずやってみて世に出したもん勝ちだと思えるようになりました。もっと上手な人は山ほどいるし、見られるのが恥ずかしかったんですが、今はへたくそでもやってみようってマインドに変わって、そこからいろいろ挑戦するようになりましたね。

ーーお互いに閉じていた心の鍵を外したんですね。

かりん:一緒にやれる人がいるから、安心できたんだと思います。

ほのか:鍵があることすら気づいてなかったからね(笑)。

かりん:一旦鍵が外れると、やりたいことがいっぱい出てきてびっくりしています。

ーー曲をリリースしたあたりから、特にそれが活発になっている印象を受けます。Podcastの外に出ていくことを意識されているような、挑戦したいことに飛び込むフットワークの軽さを感じるというか。

2人が作ったオリジナル曲「ワナチル」

ほのか:曲を作りたい気持ちは前からありましたが、なかなかやってみるところまでいけなくて。でも最近はYouTubeとかで作り方も調べられますし、とりあえずやってみようってことで作ったら、自分たちとしては納得いくものができました。もちろん第三者から見たら完成度についてはさまざまな感想があると思いますが、自分たちにとってのベストが作れるっていうすごく楽しい体験をしたので、自分たちなりにおもしろいことをやろうって気持ちになって。最近それを体現できたのが、私たちが主催したイベント『ゆとフェス』ですね。

 ただ、広めの会場を押さえていたのに、コロナの影響で開催1週間前に無観客となってしまったので2人ともものすごくショックを受けて“なにもやらない方が傷つかなかったのかもね”という空気になってしまって。でもそのときの気持ちを正直に発信したら、たくさんの方が本当にいろんな形で応援してくれて、「やっぱりやりたいことをやってよかった」と感じました。

『ゆとフェス』には、お笑い芸人のティモンディ・前田裕太やシンガーソングライターのさとうもかなど、番組のファンを公言する著名人・文化人も出演

かりん:単なる公開収録ではなく、歌を歌ったり、ゲストさんを呼んでトークや企画をやったり、なんでもありなイベントだったんですが、あれが『ゆとたわ』らしさかなと思います。あまりPodcastの枠にとらわれたくないですね。

ほのか:『ゆとフェス』がTwitterのトレンドにも入りました。無観客で不安だろうからって実況ツイートしてくれる方もいて。

 

かりん:ありがたいよね。同年代の子たちはもちろん、下は小学生から上は60代くらいまで、本当に幅広い世代の人たちが応援してくれて。『ゆとフェス』の参加者情報を見たら、47都道府県すべてから参加してくれていましたし、海外から聴いてくれているリスナーもかなり多くてびっくりしています。。

ほのか:2人の番組ではあるんですが、聴いてくれる方がいるから成り立っているとひしひし感じます。

ーー“魚人”ことティモンディの前田裕太さんやさとうもかさんが出演されるなど、『ゆとたわ』の輪も広がっていますよね。

かりん:前田くんやもかちゃんはもともと友だちだったわけじゃなく、「ゆとたわ」をきっかけに仲良くなったんです。映画監督の大九明子監督をゲストにお迎えこともあったんですが、それもゼロから連絡して実現しました。ゆとたわでの私たちは、ある意味、会社や友達の前での自分よりも本音を出している状態です。だからこそ、会いたい人に会えた時も、ありのままの“かりん・ほのか”としてお話ができるのがすごく嬉しいですね。

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