Appleの児童虐待対策システムに懸念の声 監視システムへの転用を阻止できるのか?

Appleの真意は批判をかわすため?

 Appleの児童虐待対策システムに対して、多数の専門家が懸念を表明している。例えば、AppleとMicrosoftでの勤務経験がある著名なテック系批評家のBen Thompson氏は、自身が運営するブログで同システムを批判する記事を公開した。同氏の主張は、ユーザにはCSAM検出を回避できる選択肢があるものも、そもそもユーザのプライバシーを脅かす可能性のある機能を実装したこと自体が問題である、というもの。ユーザがCSAM検出機能を回避できても撤廃できないことも問題視している。

 スタンフォード大学のインターネット観測所に所属するAlex Stamos氏は、同大学でデジタル製品の安全性とプライバシーに関する会議を数年間にわたって開催しており、Appleをこの会議に招待したが出席を拒否された、とツイートした(下のツイート参照)。そして、今回の児童虐待対策システムの発表は、デジタル製品の安全性とプライバシーのバランスに関する今までの議論を台無しにしている、と付け加えている。

 テック系メディア『recode』が10日に公開した記事は、Appleが児童虐待対策システムを導入する理由について考察している。2019年11月、ニューヨークタイムズ紙はAppleをはじめとするいくつかのテック系企業がCSAMの検出を困難にしていることを非難する特集記事を公開した。Appleが今回発表のシステムの導入を決定したのは、これ以上メディアからCSAM対策で非難されないため、というシンプルな理由からではないかとrecodeは述べている。

 Appleの児童虐待対策システムに関しては、「児童を犯罪から守るため」という目的自体は誰もが納得するものである。しかし、その安全性に関してはAppleが継続的に周知しなければならず、技術的な問題についても専門家を交えた議論が必要だろう。

トップ画像出典:Apple「Expanded Protections for Children」より画像を抜粋

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