Appleの児童虐待対策システムに懸念の声 監視システムへの転用を阻止できるのか?
Appleの真意は批判をかわすため?
Appleの児童虐待対策システムに対して、多数の専門家が懸念を表明している。例えば、AppleとMicrosoftでの勤務経験がある著名なテック系批評家のBen Thompson氏は、自身が運営するブログで同システムを批判する記事を公開した。同氏の主張は、ユーザにはCSAM検出を回避できる選択肢があるものも、そもそもユーザのプライバシーを脅かす可能性のある機能を実装したこと自体が問題である、というもの。ユーザがCSAM検出機能を回避できても撤廃できないことも問題視している。
スタンフォード大学のインターネット観測所に所属するAlex Stamos氏は、同大学でデジタル製品の安全性とプライバシーに関する会議を数年間にわたって開催しており、Appleをこの会議に招待したが出席を拒否された、とツイートした(下のツイート参照)。そして、今回の児童虐待対策システムの発表は、デジタル製品の安全性とプライバシーのバランスに関する今までの議論を台無しにしている、と付け加えている。
Apple was invited but declined to participate in these discussions, and with this announcement they just busted into the balancing debate and pushed everybody into the furthest corners with no public consultation or debate. pic.twitter.com/a3OTxkzH43
— Alex Stamos (@alexstamos) August 7, 2021
テック系メディア『recode』が10日に公開した記事は、Appleが児童虐待対策システムを導入する理由について考察している。2019年11月、ニューヨークタイムズ紙はAppleをはじめとするいくつかのテック系企業がCSAMの検出を困難にしていることを非難する特集記事を公開した。Appleが今回発表のシステムの導入を決定したのは、これ以上メディアからCSAM対策で非難されないため、というシンプルな理由からではないかとrecodeは述べている。
Appleの児童虐待対策システムに関しては、「児童を犯罪から守るため」という目的自体は誰もが納得するものである。しかし、その安全性に関してはAppleが継続的に周知しなければならず、技術的な問題についても専門家を交えた議論が必要だろう。
トップ画像出典:Apple「Expanded Protections for Children」より画像を抜粋