35年以上紡がれた「オリンピックとゲームの歴史」 4つのタイトルからその軌跡を振り返る
来たる7月23日に開催されるスポーツの祭典「東京オリンピック・パラリンピック」。2013年の招致決定から実に8年、新型コロナウイルス(COVID-19 )の影響を受けて1年の延期と開催方式の変更が余儀なくされたものの、16日間にわたって計33競技(※オリンピック)が実施となる。
コロナ禍もあって無観客での開催が大半になってしまったが、そんな今だからこそ、筆者は自宅で安全に楽しめる「オリンピックゲーム」に焦点を当てたいと考えている。オリンピックゲームとは文字通り、”オリンピックを題材に取り扱ったゲームタイトル”だ。今回は具体例として新旧4タイトルをピックアップし、ゲームシステムの傾向やオリンピックの描かれ方にフォーカスする。
『ハイパーオリンピック』シリーズ(1983年/コナミ)
オリンピックゲームの元祖を挙げるなら、1983年10月に稼働を開始したアーケード筐体向け作品『ハイパーオリンピック』(海外版タイトル名:Track & Field)が妥当だろう。1984年7月のロサンゼルスオリンピックをテーマとしており、「100m競争」・「110mハードル」・「走幅跳」・「やり投げ」・「走高跳」・「ハンマー投げ」の合計6種目を収録。後にLSIゲームやMSXといった他機種へ移植が進み、1985年6月にはファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)版も発売。以降、2010年ごろまでシリーズ作品が展開されてきた。中でも『ハイパーオリンピック』は、数あるオリンピックゲームの中でも知名度が高め。40代以上のユーザーなら「オリンピックゲームと言えばコレ!」と本作を挙げる人が少なくないはずだ。
気になるゲームシステムは”ボタン連打”の一言に尽きる。コントロールパネルは、キャラクターを走らせるためのRUNボタン、助走をつけたキャラクターを跳躍させるためのJUMPボタンに分かれており、プレイヤーは2種類のボタンを駆使してベストスコア更新を目指していく。
一部の競技はボタンを押すタイミング等が異なるものの、基本スタンスは6競技で共通。ゆえに、プレイヤーはとにかくボタンを押して押して押しまくる必要性があった。ゲームシステム的にはシンプル極まりない作りであったからこそ、プレイヤー自身の反射神経と連打力(いわゆるフィジカル)がふんだんに試された。定規派や硬貨派など、連打に用いる道具で派閥が分かれた経験者も多いのではないだろうか。
『ニューマンアスレチックス』(1993年/ナムコ)
『ハイパーオリンピック』のリリースからおよそ10年、1993年にアーケード筐体タイトルとしてスタートしたのが『ニューマンアスレチックス』である。ただし、こちらは携帯アプリ版やバーチャルコンソール版(Wii)をのぞき、家庭用ゲーム機へは一切移植されていない。現在プレイ手段を整えるには基盤が必要となるため、そういった点ではオリンピックゲームの中でもレア度が高いと言えるだろう。続編の『マッハブレイカーズ』も1995年にリリースされているが、同様にアーケード筐体版のみとなっている。
プレイヤーは最初に「ハリー」(アメリカ)・「シャロン」(フランス)・「マサエモン」(日本)・「ボンゴ」(ケニア)の中から1名を選択。こちらもやはり、3つのボタンを全力で押す”連打重視”のゲームシステムを採用している。
とは言え、収録されている競技は全て架空のもの。”各国の選手は人間離れした超人”という設定を生かし、身の丈以上のミサイルをぶん投げる「ミサイルトス」(ケニア)、テリーマンさながらに新幹線を全身で受け止める「バーサスエクスプレス」(日本)、凶暴なモンスターに光弾をぶちかます「ニューマンスナイパー」(北極)……などなど、地域ごとに独特なシチュエーションを用意。オリンピックの再現と言うより、”オリンピックの構造を使ったバラエティ色の強いスポーツゲーム”といった印象が目立つ作品だ。