3Dプリントで作られた“指”が『スーパーマリオブラザーズ』のスピードランに挑む 

 米メリーランド大学の研究者チームが、『スーパーマリオブラザーズ』をプレイするソフトロボットを3Dプリンターで制作した。研究は、米科学雑誌『サイエンス・アドバンシス』の表紙を飾るほどの注目を集めている。

 同大学のニュースレターによると、これは「ソフトロボティクス」として知られる分野で、「柔軟性と膨張性をもつ新しいタイプのロボットで、電気ではなく水、または空気を使って動力を供給する」ものだという。研究チームを率いるRyan D. Sochol准教授は、「この10年ほどの傾向として、『ターミネーター』や『スター・ウォーズ』のC-3POのようなメカニカルなものとは違う、『ベイマックス』のようなソフトロボットの開発が進んでいる」と述べた。

 この研究で革新的なのは、「統合された流体回路」を備えたソフトロボットを3Dプリンターで作成したことだ。 

 以前は、ソフトロボットの各指をそれぞれ動かすには、実用性を損なうような制御ラインが必要だったという。しかし「統合された流体回路」によって、1つの圧力入力で複数の操作が可能となったようだ。また本来これらの流体回路をロボットと統合するには、高度なスキルと多くの時間を要したが、3Dプリンターの活用によってわずか1日で完成させることができたのだという。

 デモンストレーションをするにあたって、チームは『スーパーマリオブラザーズ』をプレイするための、制御圧力の強さに応じて指を操作できる流体回路を設計した。低圧をかけると手前の指が動き十字キーの右ボタンが押され(マリオが歩き出す)、高圧をかけると十字キーの右と、Aボタン、Bボタンが同時に押される(走りながらジャンプする)仕組みだ。そして圧力を自動操作するプログラムを設定してプレイさせたところ、ステージ1を90秒以下でクリアすることができたという。

手前が低圧、真ん中が中圧、奥が高圧|Ryan Sochol YouTubeより
高圧をかけると、3本の指が全て動作する|Ryan Sochol YouTubeより

 スピードランへの挑戦は、研究のためであると同時に、“楽しそう”という理由で始めたそうだ。ただ結果的に、タイミングの調整が必要なことや1回のミスでゲームオーバーにつながるこのゲームのルールが、ソフトロボットのパフォーマンスを評価する新しい手段となったと評価している。

 発売から30年以上が経つ今も高い人気を誇る『スーパーマリオブラザーズ』は、思わぬ分野で活用されているようだ。

Ryan Sochol YouTubeより

(画像=University of Marylandより)

■堀口佐知
ガジェット初心者のWebライター兼イラストレーター(自称)。女性向けソーシャルゲームや男性声優関連の記事を多く執筆している。

〈Source〉
https://enme.umd.edu/news/story/university-of-maryland-engineers-have-3d-printed-a-soft-robotic-hand-that-can-play-nintendo

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