なぜSNSは“機能”を真似し合うのか? Twitter「フリート」終了、「YouTube Shorts」スタートなどから考える
しかし、筆者はこうした「その機能、他SNSのあの機能と同じじゃない?」といった流れには以前から思うところがあった。極論を言ってしまえば、この流れが続けばどのSNSも同じような機能になってしまうのではないか。メインの投稿コンテンツが文字なのか、写真なのか、動画なのか。そこが違うだけで、機能的には似たりよったりになりつつあるように感じている。それはSNSを使うユーザーにとって、新鮮さが失われることなってしまうのではないか。TikTokは動画の長さを最大60秒から3分まで伸ばすと今年7月に発表したが、コンテンツ的には拡大されたとしても、YouTubeとの差別化は弱くなったといえる。
とはいえ現実はそれほど簡単ではない。いくら現在のTikTokが若者の覇権アプリであっても、長尺のレシピ動画やアーティストのMVを見るにはYouTubeが必要になるし、Instagramの投稿と共に長いテキストを添えるよりも、一文ツイートする方が検索性は高い(検索性を重視するかは別だが)。ユーザーがそこまでSNSを使い分けているかの実態はわからないが、やはり餅は餅屋であることに変わりはない。しかし、例として挙げたInstagramの投稿にテキストを添える方法などはTwitterを食ってしまっているとも言えるし、あるいは文字数制限や写真加工、ハッシュタグの違いなどからInstagramならではの利点も多数ある。
大手のSNSは多機能化するにつれて、個性を失ってしまうのではないか? そして、個性を失うということは「どのSNSを使っても同じ」になるのではないか? これが筆者の懸念だ。
筆者はTumblrというミニブログSNSを10年以上愛用しているが、Tumblrにはストーリーもクローズドな音声コミュニケーションもない。他SNSの機能を取り入れるようなことをせず、できることはローンチ当時からほとんど変わっていない。それは時代にあわせた新機能の追加をしない古めかしいアプリともいえるし、新しいことを覚える必要がないシンプルなサービスともいえる。そのシンプルさが、筆者はとても好きだ。
Twitter、Instagram、Facebook、TikTok、Pinterest、Tumblr、Clubhouse、note、LinkedIn、Snapchat、Discordなどなど……。様々なSNSサービスがユーザーに素敵な体験を与えようとしているが、新興SNSの機能や、既存SNSの追加機能などを取り込み続けていけば、いわば蠱毒のような最強SNSが生まれるかもしれない。競争原理としては正しいのかもしれないが、今やSNSはインフラ化しており、いっそ競争原理を超越した国政アプリのようなものが生まれてしまうのも一つの方法ではないかと筆者は思っている。例えばLINEなどはもはやインフラに近いサービスとなっている。
SNSの機能的カニバリゼーションの果ては、一体どうなってしまうのか。トレンドを顧みないオンリーワンな存在になるべきか、機能の取捨選択を続けながら万能系SNSを目指すべきなのか。企業にとってもユーザーにとっても、悩ましい問題だ。
執筆、画像ソースは以下。
https://blog.twitter.com/ja_jp/topics/product/2021/goodbye-fleets
https://blog.twitter.com/ja_jp/topics/product/2020/ntroducing-fleets-new-way-to-join-the-conversation-jp
https://jp.techcrunch.com/2021/07/14/youtube-shorts/
https://www.theverge.com/2021/7/1/22558856/tiktok-videos-three-minutes-length
https://youtube-jp.googleblog.com/2021/07/youtubeshorts.html?fbclid=IwAR3Y1sMzhTciZCZMe_5DgQevXYCpekmYdQef5uO7EXYcH5Un5Pm5t67TqeM