YMOやエイフェックス・ツインもインスパイアされた、ゲームミュージックとダンスミュージックの邂逅

ゲーム音楽×ダンスミュージックの邂逅

 さて、Power-Pill の『Pac-Man』以外にも、90年代には、ゲームミュージックとダンスミュージックが邂逅した作品が数多くリリースされている。

 たとえば、1993年には、アンバサダーズ・オブ・ファンク・フィーチャリング・M.C.マリオによるアルバム『スーパー・マリオ・コンパクト・ディスコ』が発売されている。これは、さまざまな『スーパーマリオ』シリーズのBGMをサンプリングしたディスコハウスで、イギリスの音楽プロデューサーであるサイモン・ハリスが手掛けている。

 また、1994年にはセガ・メガドライブ用のアクションゲーム『パルスマン』のコンピレーションアルバムがリリースされ、NINJAHEAD(石野卓球)、LAST FRONT(田中フミヤ)、STEREOTYPE、C.T. SCAN(CMJK)といった豪華メンバーが名を連ねたことで話題となった。

 さらに、1992年ごろ、都内ではゲームカルチャーとクラブカルチャーの融合を目指したクラブイベント、"東京ゲーマーズナイトグルーヴ(TGNG)"が発足。ほぼ時を同じくして、1995年には大阪でゲームミュージックオンリーのクラブイベント、"FARDRAUT(ファードラウト)"が誕生するなど、ゲームミュージックとダンスミュージック(およびクラブカルチャー)との接点はより濃くなっていった。

 なお昨今では、往年のゲームミュージックから影響を受けて楽曲を制作するミュージシャンやDJも珍しくはない。

 アメリカのDJ/ラッパーのフライング・ロータスは、「『ファイナルファンタジーVII』は生涯のベストゲームだ」と豪語し、ゲームの曲をリミックスして自身のライブでプレイするほど。

 また、同じくアメリカはロサンゼルス出身のベーシスト、サンダーキャットは、好きなゲームに『ストリートファイターII』や『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』を挙げ、「ゲームミュージックには多大な影響を受けた」と語っている。

 さらに、Hyperdubレーベルの主宰でもあるDJ、Kode9は、過去にインタラクティブメディアのサウンド講座でゲーム音楽の授業を担当していたそうで、その造詣は深く、最近ではゲームミュージックの歴史を紐解くコンピレーションアルバム『Diggin' In The Carts』の監修を手掛けたほどだ。

 世界初のアーケードゲームと呼ばれる『コンピュータースペース』(1971年)が誕生して半世紀。ゲーム機の進化、およびメディアの大容量化などによって、ゲームそのものはもちろんのこと、ゲームミュージックのかたちも大きく様変わりをしてきた。音色や音数などにおける制約もなくなり、音質も通常の音楽CDと同等になった。

 ゲームを盛り上げるためのひとつの要素であった音楽は、長い時を経て、ゲームをプレイしていなくても楽しめる独立した音楽へと昇華した。

 音楽ジャンルのひとつとして定着し、クラブやイベントなどでゲームミュージックが掛かること(そして踊ること)もより一般的になり、さらにはジャズやオーケストラなどとも融合し、近年はゲームミュージック専門のコンサートなども多数開催されている。

 40年前に誕生した『パックマン』が色褪せず、いまだ世界中のポップカルチャーに多大な影響を及ぼしていると同じように、ゲームミュージックも各国のミュージシャンやDJ、そしてさまざまなシーンに影響を与え続けているのである。

■発売・配信情報


『PAC-MAN x DiAN x GCORES Industries トリプルコラボレーショングッズ』
販売期間:2021年7月19日〜
詳細はこちら

『PAC-MAN 40周年メモリアルブルゾン』
販売期間:2021年7月19日〜
詳細はこちら

Yaeji feat. DiAN「PAC-TIVE」
Music Video
配信シングル

DiAN『Electric Dreams -电子白日梦-』
2021年8月4日配信開始

同時配信2ndシングル『Moonbow Disco』
Music Video
配信シングル

「Lucky Rain」
Music Video
配信シングル

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる