AIやバクテリアが数百年前のアートを修復!? テクノロジーの進化でよみがえる作品たち

テクノロジーの進化でよみがえるアート

汚れを食べる“世界最小”のアート修復者

 大理石の彫像の清掃に、バクテリアが使用される事例も見られている。

 イタリア・フィレンツェのサンロレンツォ大聖堂内にあるメディチ家礼拝堂には、ミケランジェロが制作した大理石の彫像がある。礼拝堂には1537年に暗殺されたフィレンツェの元統治者、アレッサンドロ・メディチが埋葬されているが、内臓の処理が適切に行われなかったため、遺体から化合物が漏れ出して彫像に浸透、通常の洗剤では取り除けないほどの汚れとなった。

 そこで芸術修復家チームは、バクテリアにこの汚れを食べさせる革新的な方法を採用。生物学者のアンナローザ・スプロカティ氏は、1,000を超えるバクテリアを調査、選定した。一部のバクテリアは汚れを食べたが、彫刻をも食べてしまったといい、選定には大いに苦労したようだ。同氏はいくつかの候補に絞ると、礼拝堂の祭壇の後ろにあるサンプルセクションでテストを行った。

サンプルセクションでのテスト
サンプルセクションでのテスト|ニューヨークタイムズより

 その中でも「Serratia ficaria SH7」と呼ばれるバクテリアは特に優秀で、油、接着剤、リン酸塩を食べ、大理石を白く輝かせた。「SH7」は人間には無害であり、胞子を残すこともないという。このバクテリアは現在、ローマのサンピエトロ大聖堂にあるアッティラとレオ10世の彫刻の清掃にも使用されている。

きれいになった彫刻
きれいになった彫刻|ニューヨークタイムズより

 時が経つほどアート作品は劣化していくが、修復技術は進化しており、むしろ完全な姿を取り戻すケースも多く見られている。「夜警」のように、新たな姿を見せる作品は今後も増えることだろう。テクノロジーを利用した修復は、安全かつ正確と見なされることも多く、人間の手作業による修復以上に主流な方法となるかもしれない。

(画像=アムステルダム国立美術館 プロジェクトページより)

■堀口佐知
ガジェット初心者のWebライター兼イラストレーター(自称)。女性向けソーシャルゲームや男性声優関連の記事を多く執筆している。

〈Source〉
https://www.rijksmuseum.nl/en/whats-on/exhibitions/operation-night-watch
https://www.theguardian.com/technology/commentisfree/2021/jul/03/enjoy-the-restored-night-watch-but-dont-ignore-the-machine-behind-the-rembrandt
https://observer.com/2021/06/medici-chapel-florence-bacteria-michelangelo/
https://www.nytimes.com/2021/05/30/arts/bacteria-cleaning-michelangelo-medici-restoration.html

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