『takt op.(タクトオーパス)』特集
「クラシック楽曲のキャラクター化」に込めた創意工夫ーーDeNA×LAMが語る『takt op.』キャラデザの裏側
キャラデザ共通ルールは「インパクトあるアイメイク」と「ドレッシーなビジュアル」
ーーLAMさんが『takt op.』のキャラデザインで特にこだわった点をお聞かせください。
LAM:僕のキャラデザインの武器は目元のインパクト、髪型やドレスの造形のキャッチ―さだと思っているので、やるからにはとことんはっちゃけようと思いました。僕自身、メイクもドレスもネイルもすごく好きな要素で「好きに入れていいですよ」と言われていたので、好きに入れました(笑)。
ーー本当にどのキャラクターもドレス、アイメイクがとても印象的です。
LAM:“運命”は「メインヒロインだから赤にしたい」とDeNAさん側から要望があったので、であれば赤いバラのモチーフはどうだろうと提案しました。身体に茨を纏っているのは「“運命”が運命に縛られている」という意味を込めています。目元には十字の模様を施しました。
また“きらきら星”は少女感漂うガーリッシュで子どもっぽいキャラクターなので、目元の4色の星マークは可愛らしいパステルカラーを選んでいます。ほかにも“カルメン”は金色のタトゥー、“ワルキューレ”は翼など各キャラクターのメイクに意味やアイデアを込めています。
油井:DeNA側としてもLAMさんの描くインパクトのあるアイメイクとドレッシーなビジュアルを生かすという共通ルールを設定していて、最終的にそこはしっかり着地できていたと思います。
ーーDeNA側の意見を参考にイメージを固めていく場面もあったのでしょうか?
LAM:僕から都度「どうですか?」と意見を求めることはかなり多かったです。『takt op.』に関わるまではこれほどの人数がいる作品のキャラデザインを担当した経験はなく、“カルメン”のようなお姉さん属性や“きらきら星”のような少女属性はほとんど描いたことがなくて。キャラクターのポジションや役割を加味した上でどういう要素やフェチズムを持ったキャラクターにするかを考えていたのですが、DeNAさんと僕の間で認識に乖離が生まれる瞬間もありました。
可愛いキャラクターが好きなスタッフの方たちから「いやいや、甘いです。もっと少女感を強くしましょう」と言われ、頭身を変えることもありました。その属性が好きな方に響くキャラクターにしていくのが重要だと考えていたので、ギャップをすり合わせたり意見交換したりかなりコミュニケーションを取っていたと思います。好きな方たちにとことん響くキャラクターを考えよう!と詰めていく作業はとても楽しく、今後描くキャラクターの幅にも大きく繋がっていると感じています。僕に好き勝手させてしまうと全員釣り目になってしまうので(笑) 。新しい扉を開くキッカケになりました。
ーー話し合いの中で特に変化のあったキャラクターはいますか?
LAM:最初と完成形で大きく変化があったのは“カルメン”ですね。ぼんやりと造形は浮かんでいたものの、どう話してどう振舞うのかまでイメージが湧かず、最初のデザインに納得がいきませんでした。なので、DeNAさん側に「こういう役割があり、こういう喋り方をし、こういう良さと欠点がある」と色々なヒントをいただいて。イメージが掴めたとき、パパっと描けました。以前見に行った『カルメン』の舞台を思い出し、「フラメンコ」や「踊り子」をイメージして描いています。
ーーLAMさんの描かれたキャラクターについて、油井さんはどう感じていますか?
油井:とても良かったです。最初に描いていただいた“運命”は、LAMさんご自身「LAMの“運命”を目指した」と仰っていましたけど、第三者である自分が見ても「これは“運命”だ」としっくり来るほどすごく魅力的でした。
僕たちもLAMさんへ要望をしっかり伝え、LAMさんも都度意見を出してくれて。全てのキャラクターで意見交換をしていました。結構意見のぶつかり合いも多かったですけどね(笑)。
LAM:何か意見があるならしっかり聞いて、変えるか変えないかを判断した方がいいなと。僕も最初から自分の答えが正解だとは思っていないので、意見を取り入れたり、逆にここだけは譲れないという要素はこちらから伝えたりしました。僕が本当にいいと思ったもの、直してしまうと惜しいと感じたものは都度相談させていただきました。
「ぜひ考察しながら楽しんで」
ーー現在は5人のキャラクターが公開されていますが、今後も続々とキャラクターが展開されていくのでしょうか?
油井:もちろんあります。現在もLAMさんに描いてもらっています。
ーー同じ作曲家の楽曲が登場するといった展開もあり得るのではと期待してしまうのですが、楽曲・作家同士の繋がりを踏まえてデザインを考えていることも……?
LAM:想定して描いています。例えば『木星』と聞いたとき、『火星』や『金星』などはあるのだろうか?と最初の段階から当然疑問は抱いていて。もし登場する可能性が少しでもあるならと共通要素のアイデアを提案させていただきました。
ーーキャラクターに込められたモチーフやキャラクター同士の共通点を考察するといった楽しみ方もできそうですね。
油井:キャラクターのドレスやメイクも各楽曲の様々な由来から持ってきているので、そのあたりも楽しんでいただけたら嬉しいです。
LAM:ぜひ考察してほしいですね。実は昨年開催した個展に一枚だけ意味不明な絵を飾っていたのですが、それは『takt op.』に登場するとあるキャラクターでした。情報解禁前からいろんな仕掛けを隠していたので、そういうのも探していただけたら面白いかもしれません。
ーー今後の展開がとても楽しみです。最後に『takt op.』の展開を待ち望んでいるファンのみなさんに向けてメッセージをお願いします。
油井:2017年から約3年半をかけ、クラシックの本場へ足を運び、キャラクターコンテンツ・IPプロジェクトとしてかなり深くつくり込んでいます。少女たちがどうやってクラシックの力を宿したのかクラシックの力を宿す前の生い立ちなど、一生表に出ないであろう膨大な設定も相当深くまで練っているので、そういったところからにじみ出る面白さを感じていただけたらと思います。
また、『takt op.』を通してクラシック音楽を再発見してもらいたいです。「電話のベルで鳴っていた曲は『G線上のアリア』だったんだ」と気づきを得てもらい、そこからクラシックに興味を持ってもらえると楽しみの幅がさらに広がるのではないでしょうか。
LAM:油井さんのおっしゃる通り、クラシック音楽に興味を持ってもらうことが本望です。『takt op.』に関わり始めて、クラシックは文化としてとても素晴らしいと気づきました。今以上にフューチャーされると嬉しいなと思います。
「私の知ってるあの曲、『takt op.』ではどんな子だろう?」と予想してもらいつつ、アンサーとしていい意味での裏切りができたらいいなと(笑)。キャラクターを見て「なんでこの子はこういうデザインなんだろう?」とモチーフから紐解いて楽しんでほしいです。