連載:クリス・ブロードの「ガイドブックに載ってない日本」(第5回)

外国人YouTuberの僕から見た、“日本の変わるべき部分”

外国人から見た日本の“不便さ”

 日本は何をするにも基本的に便利な国ですが、事務処理の多さに辟易することがあります。

 例えば車を買うにしても、欲しいと思ってすぐに手に入るわけではない。購入予定の車が駐車場に入るのかどうかを確かめるために警察官が家までやってきて、駐車場の大きさを測る。それから市役所に行って書類の記入。不備があれば、書き直し……と、車を買うだけで2週間もかかりました。ちなみにイギリスなら、ディーラーに行ってお金を払うだけで車が手に入るので、その日のうちに乗って帰ることが可能です。

 また外国人からすると、判子文化も面倒に思います。自分はファーストネームだけのものとフルネームのものの2つを持っているのですが、フルネームの方は保険会社に言われて作ったものです。判子は色々とルールがあり、「押し方が悪い」だなんだで何度もやりとりが発生した後で、最終的にサインでもいいと言われたこともあります。

 また、判子の重要性を認識していなかった時期に、銀行の届出印を捨ててしまい、窓口の方たちを慌てさせてしまったこともありました。銀行員が10人ほど集まって、40分ほど話し合っているのです。最終的に届出印がなくとも対応してくれることになりましたが、軽い騒ぎになってしまい、その深刻さにこちらが驚きました。日本は技術的に発展しているのに、こと判子に関してはオールドファッションを貫いていますね。

 イギリスにはない文化なので物珍しさから判子を喜んだこともありましたが、無くすたびに家中をひっくり返して探すのを繰り返しているので、今では面倒臭いと思っています。ペンさえあればできるサイン文化の方が便利です。

 また不便というより、外国人にとって単純に大変なのは、物件の借りにくさとビジネスの始めにくさが思い浮かびます。仙台に引っ越すときに素敵なアパートメントを見つけたのですが、僕が外国人だという理由で、オーナーに断られてしまいました。

 イギリスで外国人であることを理由に賃貸拒否をしたら間違いなく大問題に発展しますが、日本なら仕方のないことかもしれません。日本に住む外国人の数は多くなく、ある日突然、日本を去ってしまう可能性も捨てきれません。よく考えるとリスクはわかるのですが、私としては断られるなんて想像もしていなかったのでかなり驚きました。ビジネスの始めにくさも、同じ理由から来ているのでしょう。

 また、これは田舎特有のことかもしれませんが、外国人の接客に慣れていないからか、モーゼの十戒で海に道ができたように、店員さんたちが引いてしまうことがあります(笑)。もっとも、東京ではそんなことないので、これは不便というより面白い体験として捉えています。

外国人から見た日本の変わるべき部分

 日本はもっと男女平等になるべきだと思います。日本で生まれて生活していると感じづらいことかもしれませんが、海外の目線から見ると、日本は明らかに男性優位の社会で、女性も男性と同じようにチャンスに恵まれることを願っています。

 政治家を見ても、男性の比率の方が圧倒的に高く、企業のトップもほとんどが男性です。小池百合子都知事がいい例ですが、日本では人の上に立つ女性=怖いと思われがちです。強い女性が日本の伝統的な女性像と異なるからかもしれません。

 イギリスでは、女性は男性と同じように活躍しています。大企業を率いる女性も多く、性別に関係なく様々な可能性が広がっています。ボリス・ジョンソン首相の前は、テリーザ・メイという女性が首相(2016年~2019年)でした。マーガレット・サッチャー党首(1975年~90年)のことは日本でもよく知られているでしょう。政党にも多くの女性が在籍しており、大多数が男性ということはありません。

 数年前に安倍晋三元首相が「女性活躍推進」を唱えたことがありましたが、現実的には、女性は仕事か子どもかの二者選択を迫られると女友達から聞いています。仕事を選んだら子どもが持てないなんて、馬鹿げていませんか。結婚しても、子どもを持つのはキャリアを構築してから、と先延ばしにする人がいると聞きます。育児休暇に入っても、職場に復帰した際にかつての役職が保証されるわけではなく、降格させられることもある、とも。母親になっても会社にいられるけれど、仕事の内容は変化することが多いとも聞いています。これは日本にとって大きな問題と捉えるべきではないでしょうか。

 女性の権利が守られていると言われている国でも、蓋を開けてみれば女性が苦労していることは、もちろんあります。しかし、男女平等を世界ランキングで見ると、日本は先進国でありながら底辺レベルです。日本だけでなくどの国でも女性の権利は決して男性と同じとは言えませんが、アメリカと比較しても日本はかなり遅れています。これは非常に残念なことです。

 その原因のひとつに、高齢の男性がリーダーで居続けることが挙げられるでしょう。日本は技術がこんなにも発達しているのに、高齢者に合わせるために、いまだ紙文化を大切にし、FAXを使わせることもある。東芝やオリンパスといった大企業が低迷したのは、若い人の意見やアイディアに耳を傾けなかったからだと指摘されています。新しいアイディアが出ても、日本では若者の意見が取り入れられることは容易ではありません。紙文化が守られすぎていることと、高齢者が会社のトップに立っていることは、日本の根本にある問題点のひとつだと思います。

 私の母国イギリスでは、会社は年功序列ではなく、パフォーマンスがものを言います。何歳であろうとパフォーマンスが悪ければ、会社にい続けることはできません。これは資本主義的で無慈悲とも言えるかもしれませんが、日本はパフォーマンスに関わらず高齢者を雇い続けた結果、大きな企業が傾いているという側面もある。もちろん、生活の面で高齢者を守ることは極めて重要ですが、ビジネスの面でも守られ、陣頭に立ち続けた結果、従業員を露頭に迷わせてしまったら本末転倒です。

 こういった会社のあり方を含め、広い視野をもつためにも、日本人はもっと海外に出て外の世界を見る必要があると思います。10~15年前と比較すると、海外へ留学する日本人留学生も減っています。経済的な理由も大きいと思いますが、外の世界に出て、異なる考え方を母国に持ち帰ることは大きな意味があります。

 私が教えていた生徒たちの多くが海外に行ったことがありませんでした。日本にはアメリカやイギリスに住んだことのない英語の先生がたくさんいますが、生徒たちに英語を勉強するモチベーションを持たせるためには、先生自身がそういう経験を持つ必要もあるでしょう。

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