Z世代に支持される「オンラインのたまり場」のつくり方 『パラレル』が見る音声サービスの普及と可能性

Z世代に支持される「オンラインのたまり場」のつくり方 『パラレル』が見る音声サービスの普及と可能性

コロナ禍の影響もあり、ここ1年でPodcastやインターネットラジオそして最近ではClubhouseなどの“音声”を軸としたサービスが増加し、ユーザー数を増やしている。そんな広がりを見せ始めた音声メディアや音声SNSについて、有識者に未来を予想し考察してもらう連載企画「声とテクノロジーで変革する“メディアの未来”」。

 「リモート飲み」やClubhouseの流行など、昨年から続くコロナ禍で、人々のオンラインでの交流は加速した。そんな中、Z世代を中心に支持を集める音声SNSがある。「オンラインのたまり場」をコンセプトとする、『パラレル』だ。

 コンセプトの通り、集まるきっかけは問わず、気軽にオンライン上で好きな人と会話をしながら様々なコンテンツを楽しめる「場」を提供している。動画コンテンツを視聴したり、ゲームをしたりしながらオンライン通話を楽しむことに抵抗のないZ世代だが、パラレルは今後どのようにしてキャズムを超えるのか。また、現在の音声関連サービスの普及についてどう見ているのか? パラレルの企画・開発・運営を担う、React株式会社の共同代表である青木穣氏、歳原大輝氏に話を聞いた。(鈴木梢)

好きな人たちといつでも気軽に話せる世界を実現したい

―― パラレルというサービスをつくろうと思ったきっかけは、なんだったのでしょうか。

青木穣(以下、青木):パラレル以前にもtoCのサービスをいくつかつくっていたのですが、どれもクローズしてしまい、「次がラストチャンスだ」というときに、最後は自分たちが好きな領域で事業をしたいと思ったんです。共同代表の歳原がゲーム好きで、僕も一緒に昔からの友だちとオンラインゲームをやっていたときに気づいたことがあって。

 20代後半とか30代くらいになってくると、子どもが生まれたり転勤していたりと、リアルに集まる機会が少なくなるんですよね。ゲームはあくまできっかけで、そこからコミュニケーションが生まれて、近況報告がお互いにできたという体験がとても心地良かったんです。その出来事が、パラレルを立ち上げようと思った原体験です。

―― ゲームをやりながらコミュニケーションを取れるというよりも、コミュニケーションのきっかけとしてコンテンツがあるということですね。


青木:そうです。たとえばDiscordは、「ゲームをする」ことが目的のコミュニケーションツールだと思っています。でもパラレルの場合は、集まるきっかけはなんでも良くて、「好きな人たちと喋る」ことが目的で、そのための「オンラインのたまり場」を作っている。それがコンセプトです。

―― コロナ禍で「リモート飲み」なども非常に流行しましたが、パラレルも音声で交流するサービスなので、コロナ禍も手伝ってユーザー数が伸びたところはあるのでしょうか?

青木:たしかに、2020年に新型コロナウイルス感染症が広まり始めてから、半年くらいで700%成長になりました。「リモート飲み」などは流行りましたが、結局みなさん、何を話せばいいかわからなくなったりして、あまりやらなくなってしまいましたよね。

 その点パラレルは、コンテンツをきっかけにコミュニケーションを促進させるコンセプトなので、リリース自体はコロナ以前ではありますが、結果的にコロナ禍は普及を加速させるきっかけになりました。幅広い年代の方にお使いいただいていますが、特にZ世代と呼ばれる20代の方々から爆発的に伸びています。

―― パラレルは、サービス内に用意されたコンテンツや外部のゲームなどを楽しみながら利用される方々が多いと思うのですが、意外な使われ方は何かありましたか?

青木:「オンライン同棲」や「オンラインシェアハウス」ですかね。カップルやグループでオンライン状態を保って、ミュートするのはトイレのときくらい。食事中やお風呂に入っているあいだもずっとつなぎっぱなしで、各々のことをやっていて、話したいときに話す。つなぎながら一緒にテレビやYouTubeを観たり、ゲームしたり。

―― 2000年代にも、WILLCOMで同じような現象がありましたよね。

青木:状況としては似ているかもしれませんね。実際、主なユーザーの年代は当時のそういった層と似ていて、24歳以下が約70%、男女比は7:3くらいです。

Z世代がオンライン通話に抵抗がない理由

―― Z世代以外の年齢層の方々は、どんな利用をしているのでしょうか?

歳原大輝(以下、歳原):たとえば『PUBG』や『フォートナイト』、『荒野行動』などのゲームだと、先ほど青木が話したように、過去の友人関係が疎遠になったとき、SNS上でゲーム友だちをつくる人が多いんです。そうして仲良くなった友だちとパラレルを利用する、というのは30代や40代の方々にも多いですね。

―― ほかの音声SNS、音声メディアなどについてはどう見ていますか?

歳原:とてもポジティブに見ています。僕らのサービスは、リアルな友だちだけではなく、オンライン上のつながり、コミュニティなどで利用している方々はたくさんいて、仲の良い人たちで集まっていれば関係性の垣根はないと思ってるんですね。たとえばClubhouseのようにオープンな音声SNSに触れてもらうことで、クローズドで遊べる場がほしくなるかもしれない。すると適した場はパラレルになりますから。

―― 「音声SNS」というもの自体に触れるハードルはけっこう高いので、ハードルが低くなったものが出てくると業界全体のハードルが下がりますよね。

歳原:僕は中学生のときから、通話しながら誰かとゲームをするのが当たり前だったのでなんの違和感もなかったのですが、青木はそうではなかったですし、抵抗感をひっくり返すのって大変なんですよね。だからほかの音声関連サービスが流行することで概念を理解してもらえれば、「仲の良い人と集まるのがパラレルなんだよね」とスッと理解してもらいやすくなる。


青木:最近はスクールカーストのトップ層みたいな子が、知らない大人と通話しながらゲームをやるのも普通なんですよね。僕からすれば、そういったことには抵抗があったので、驚いて。ここ2、3年くらいで急拡大したカルチャーだと思います。

歳原:一時期、若い人たちのあいだで『荒野行動』が爆発的に流行ったんですよね。そのときに「オンライン通話をしながらゲームをする」ということにスムーズに触れることができた人が多いんです。だからすごく慣れているんですよね。僕が若いときは、オンライン通話しながらゲームするのは、どちらかと言えば少数派だったので。

パラレルがさらに普及するために重要なこと

―― ほかのサービスなどをきっかけにギャップやハードルを超えていく人たちがいるわけですが、パラレルとしては超えたいハードルはどんなものですか?

歳原:たくさんありますが、僕らはゲームコミュニティではなくクローズドSNSを目指しているので、ゲームをやっていない方々にどう使ってもらうかは次のチャレンジだと思いますね。

青木:友だちとの連絡はLINEなどでもできますが、パラレルがもっと「オンラインのたまり場」として認識されて、Z世代の方々のように30代以上の世代の方々にも利用していただけるようになったら、距離や場所にとらわれず他愛のないコミュニケーションが毎日頻繁に生まれると思うんです。

 今は平日に仕事関係の人以外と話さない人がほとんどなのではないでしょうか。でも、家で話しながらサクッとお酒を飲むようなことが普通になったらいい。そんな文化を僕らが作りたいんです。現状ではまだまだ非常にハードルが高いですよね。僕らが、「パラレルはいつでも来ていいし、いつでも帰っていいんだよ。しかも、仲の良い友だちしかいないよ」と啓蒙活動をしていくことによって、「オンラインのたまり場」文化が当たり前になればいいなと思っています。

―― 啓蒙活動とは、具体的にはどんなことですか?

青木:ユーザーの熱量を同心円状に広げていくしか方法はないと思っています。キャズムを超えるタイミングで大きな宣伝はするかもしれませんが、今は地道に体験の広がりをサポートしていくしかないかなと。まずは今利用してくれているユーザーたちに目を向け、丁寧に機能改善をしていくことが第一だと考えています。

歳原:たとえば、パラレルを開いたら友だちがどこにいるのかを見える化してあげるとか、そういったプロダクト開発がひとつ。でもやっぱり、何もないのにパラレルに居続けるのって難しいと思うんですよね。一度きっかけがあったとして、翌日、3日目と続くかってそうではないと思います。でも、パラレルを開けば楽しいことが待っている形になれば。その「楽しい」を僕らがどれだけ提供できるかだとは思っています。


 今はミニゲームなどがありますが、テレビやYouTube、ライブ配信などでも集まったら楽しい、という体験のきっかけをいかにつくるかだと思っています。そこから習慣が生まれていくと思うので。

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