『Talk About Virtual Talent』第三回:TAKUYA the bringer
VTuberシーンに欠かせない場所『エンタス』運営のTAKUYAに聞く、“異色のハコ”が生まれた経緯
『VRエンタス』を作ってわかった「ハコは生き物」
ーーVTuberにハマってDJを始めた人もたくさんいると思うのですが、その現状についてはどう思いますか?
TAKUYA:コロナの影響で難しい現状なのはわかっていますが、早く現場でプレイしてみてほしいですね。
ーー現場で最初から最後までいないと気づけないこともたくさんありますよね。
TAKUYA:自分の音楽の楽しみ方が、人の出会いも含めて現場だと思っているので、クラブで出会って仲良くなって一緒にイベントをやるようになったり、会話をする間もないDJがいても、そういうドラマが生まれることもないじゃないですか。
ーー今まで出演したり主催したVTuberイベントで、特に印象深いものって何ですか?
TAKUYA:『VIRTUAFREAK』一択ですね。初期の立ち上げを手伝っていたからというのもあるんですが、ハコ側だけではなく、プレイヤーの目線で言っても『VIRTUAFREAK』は本当に印象深いです。
ーー『VIRTUAFREAK』と他のイベントの違いは何だと思いますか?
TAKUYA:背負ってるものとカルチャーの裾野を広げていくという意味で、初期の頃から今でも続けているというのがとにかくすごいです。とにかく一番フレッシュで、一番新しい。色んなものをオマージュしながら新しいものを作ることが、イベントをやっていく上で一番大事だと思ってるので、『VIRTUAFREAK』はそれを体現していると思っています。飯寄雄麻さんのカルチャーに対する考えがすごいです(参考:『VIRTUAFREAK』仕掛け人が語る、バーチャルタレントにとっての“場所”と“丁寧さ”の重要性)。『VIRTUAFREAK』に行くことによって、VTuberに限らず音楽やアーティストを好きになるじゃないですか。他のイベントは、VTuberにフォーカスが当たりすぎて、このVTuberよかったなとか、このVTuberの曲よかったなってなることが多い。でも、『VIRTUAFREAK』はそうはならないんですよ。
ーーたしかに、『VIRTUAFREAK』に行ってからDJに興味を持ったという人は多いと思います。
TAKUYA:これは『VIRTUAFREAK』に限らずなんですが、イベントに行って感動した時のことを絶対忘れてはいけないです。自分の好きな曲を流したい、布教したい、目立って有名になりたいという気持ちが生まれるのはわかるのですが、自分がなぜそのイベントに行って感動したのか、何でDJをやろうと思ったのか、自分がDJとして活動して行く上でその気持ちを忘れないようにしてほしいです。
ーーVRエンタスを作ろうと思ったきっかけは何だったんですか?
TAKUYA:VRエンタスを作ったきっかけは新型コロナウイルスですね。場所って大事じゃないですか。アーティストが立つステージ、お客さんが集まる場所や、そこで出会ってお話をして仲良くなることって本当に大事だと思っていて。でもそれがコロナの影響でなくなっていった。それをどうにかして止めたかったし、エンタスもなくなってしまうかもしれないような状況だったから、どうにかして形に残したいという思いで、VRエンタスを作りました。
ーーVRエンタス完成までの道のりはどうでしたか?
TAKUYA:最初はVRの世界について何も知りませんでした。一度エンタスで『アルテマ音楽祭』というVRのイベントをやってもらったことがあったのですが、その時は感動はしたものの、何がすごいかまだ理解できなかったんです。そんな時にFaioがVRイベントをやり始めて、それをきっかけに1度VRChatに行ってみたんですね。案内をしてくれたFaioが色んな人を呼んでくれれたんですが、その時に色々話をして、「これってリアルで話してるのと何も変わらないじゃん」と思い、とても感動しました。それがちょうどコロナの真っ只中で、人にも会えないし話せないし、配信イベントが主流になっていた時期で、平面のコミュニケーションに少し疲れていたタイミングだったので、なおさら刺さりました。
ーー体験する前としたあとで印象がガラッと変わったんですね。
TAKUYA:会話ができるといっても、結局は目と耳だけで体験するものだと思っていたんですが、そもそも体験軸が全く違いました。表現方法だったり、コミュニケーションの取り方、リアルとさして変わらないし、最初思っていた印象とはだいぶ違いましたね。
ーーその体験をきっかけにVRエンタスの作成に乗り出したと。
TAKUYA:そうです。体験してすぐFaioに「エンタス作れる?」と聞いたら、作れますとすぐ返事をもらって、VRエンタスの創設者であるkagamiiiiinさんを紹介してもらい、VRエンタスが完成しました。まだそこまでうまく活用できていないんですが、色んな人が来てくれて作ってよかったなと思っています。
ーー実際に作ってみて何か発見はありましたか?
TAKUYA:リアルとお客さんの立ち位置や立ち振る舞いが変わらないんですよ。バーカンの前やフロア後方、メインじゃない方のバーカンに人が溜まったりだとか、リアルと全く同じなんですよね。バーチャルなのに人見知りな人は人見知りだったり。あとは、この前のイベントでリアルイベントで出番を終えた高峰伊織さんがVRエンタスに来て「さっきのライブ良かったです!」とお客さんに言われてる光景に感銘を受けました。VTuberならではの光景だし、リアルじゃないけどリアルで起こりうる光景が目の前に広がってるんです。
ーービジネス的な要素も含めて、VRエンタスで今後やっていきたいことはありますか?
TAKUYA:まずはVRエンタスで即売会みたいなものを開きたいですね。そして、即売会と連動させた音楽イベントをやりたいです。ライブパフォーマンスがエンタスではできるので、ぐるぐる回りながらライブを見て、気に入ったら買うみたいなことがしたい。曲から入ってライブに行くのもいいんですが、ライブを見てから買うのもいいなと思っていて。
ーーなんでもできてしまうバーチャルの強みを活かした催しですね。他には何かありますか?
TAKUYA:ツラニミズさんも言っていたんですが、婚活パーティをやってみたいですね(笑)。あとは、筋トレやおしゃべりをメインにしたイベントもやりたいです。ゆっくりVTuberさんと喋る機会ってなかなかないじゃないですか。30名限定とかでオフ会に使えるような用途もいいかもしれません。
ーー今後エンタスで開催されるイベントは「リアル・配信・VRChat」の形が主流になって行くと思いますか?
TAKUYA:スーパーチャットはそれが今後も主流になっていくと思います。ただ、今の形態だとVRChatの方が疎かになってしまっているのが現状です。リアルは我々スタッフがいて色んなことに対してケアができますし、配信はケアする限界があるので気にならないのですが、VRChatは実際に人が来てくれているのにその場で「来てくれてありがとう」と言える人がいないので、次また来てもらうってことが難しいんですよ。なので、そこを今後上手くケアしていきたいなと思ってます。VRChat内でもっとお互いを知らないお客さん同士を繋げていきたいです。
ーーVRChatでもリアルと変わりないようにしていくということですね。
TAKUYA:そうです。人が集まる場所って、人を繋げるキーマンがいないと、廃れていくと思っていて。ハコって生き物なんですよね。誰かが水を与え続けないと死んでしまうんですよ。人を繋げる役目を担った人間を「水」と例えると、お互い知り合いを連れて行った時に、自分が行かなくてもその2人同士で遊びに行く店ってめちゃくちゃよくないですか? そうやってその場所に行く意味みたいなものができてくると、生き物としてどんどん成長していくと思っています。VRChatでもそれをやらないといけないんですよね。
ーーいま、バーチャルの世界に人が集まる場所を作ろうとしている人や、リアルの世界をバーチャルに取り込もうとしている人はそういうところを意識するといいかもしれないですね。
TAKUYA:DJでも同じことが言えるんですよ。実際人当たりがいい人って大きなステージに立ててるんですよ。全てがそうだとは思わないですが、出会いやきっかけみたいなものを大事にしていった方が絶対いいと思います。