家具のサブスクサービスは主流となり得るのか? 無印良品の参入から考える

 1月15日、無印良品はベッドやデスクなどの家具を月額定額でレンタルできるサブスクリプションサービス(以下サブスクサービス)と開始すると発表した。同社は2020年の7月から3か月間、無印良品とIDÉEの家具やインテリアを貸し出すサービスを期間限定で実施。その反響を踏まえ、今回のサブスクサービスを日本国内182店舗で開始した。

 近年、デジタルコンテンツや衣料品のレンタル、外食サービスなど、あらゆるジャンルでサブスクが盛り上がりを見せている。新型コロナウィルス感染拡大防止の影響で外出し辛くなっている事も、その背景にはあげられるだろう。

 「家具のサブスク」はこれまでもsubsclifeやCLAS、大塚家具と提携したairRoomなどで展開されているが、社会的に信頼度の高い無印良品が市場に参入したことで、一気に知名度が高まった印象だ。

無印良品が家具のサブスクサービスで狙うもの

 無印良品が今回サブスクサービスとして発表したラインナップは、脚付きマットレス、テーブル、チェア、スタッキングシェルフの4種類。利用期間は、1年/2年/3年/4年のプランを用意しており、年契約か月額定額を選択できる。家具によっては月額300円から借りられる計算だ。

 しかし、様々なブランドの家具はもちろん、家電もレンタルできるsubsclifeやairRoomなど既存の家具サブスクサービスに比べれば、若干物足りなさを感じずにはいられない。既存の家具サブスクに比べると、契約期間の幅や家具の種類などに置いて若干見劣りする事実があるからだ。

 それでもこのサービスを始めたことには大きな意味があると考えられる。

 無印良品の家具はニトリやIKEAなどインテリア小売業界の競合に比べて若干高額である。無印良品の家事サブスクのラインナップの一つである脚付きマットレス(高密度ポケットコイル・シングル)の販売価格は29,900円(税込)。これに対し、ニトリのマットレス脚付きポケットコイルマットレス(シングル)は15,900円と、質に違いがあるとはいえニトリのお得感は否めない。

 その他の家具に関しても、相場と比べて高いとまではいわないが、ニトリやIKEAなど人気の格安家具メーカーのものに比べ、価格は高めとなっている。

 いうまでもなく無印良品の家具は、家具ブランドの中でも人気の筆頭だ。しかも、無印良品の家具はSNSやネット記事で収納・活用術が紹介されることも多く「部屋の中全部を無印良品の家具で揃えたい」といった”無印マニア”の存在もある。その影響からか、SNSやネットを使いこなす若い世代、上京した大学生や新卒社員のなかには「無印良品の家具に憧れているのに揃えられない」という層が一定数いるのだ。

 そこで、今回開始されたサブスクサービスである。引越しの費用が重なるなか、家具を揃えることに多額の金額を投資する必要もなく、インテリアのテイストに飽きがくれば返却して別の家具を取り入れられる。さらに若い世代は「物を所有しない」傾向にあり、サブスクリプションとの相性は良い。今まで無印良品の家具の購入に踏み出せなかったユーザー層をサブスクサービスによって取り込むこともでき、競合他社とは異なる別の角度からのアプローチやサービスの展開も期待できる。

家具のサブスクサービスは生き残って行けるのか?

 では、家具のサブスクサービスの将来性に関してはどうだろうか。

 レンタル系&宅配系サブスクサービスといえば、食料宅配サービス、化粧品やファッションなど多岐にわたる。今や、サブスク化できないものはないといっても過言ではないくらいだ。

 しかし、こと家具というジャンルに置いては楽観視できないのではないかと考えている。

 理由の一つ目は、「中古家具を利用する可能性がある」という点である。

 家具のサブスクを利用するということは、「中古を家で使う可能性がある」という事を納得する必要がある。もちろん、それぞれのサービスが商品のメンテナンスを十分に行っているとされてはいるし、新品を扱っているサービスも少なくない。

 とはいえ、subsclifeや無印良品、その他一部のサービスを除き、原則的には扱う商品には中古品も含まれる場合が多い。本棚などはまだしも、ベッドや椅子など他人の使ったモノを利用する事に抵抗を覚えるユーザーは少なくないだろう。

 また、例えばファッションなどのサブスク比べて「人に見せる前提ではない」事も利用を躊躇する理由となりえる。「見栄」といえば聞こえは悪いが、人は「誰かによく見られる」為の出費を惜しまない傾向にあるからだ。

 その点、一般的に「家具」は個人的な嗜好品としての需要も高い。こだわりの高いユーザーは自分で商品を購入し、所有欲を満たしたいという場合も多いだろう。

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