PS5、デジタル・エディションは売れば売るほど赤字? ソニー業績報告を分析

 日本時間2月3日、ソニーはオンラインで2020年度第3四半期の業績説明会を行った。この説明会では、PS5の販売状況や各事業セグメントの動向が明らかになった。PS5に関しては、海外メディアが価格設定に関する考察記事を公開している。

製造コストは450ドル?

 ゲームメディア『Polygon』は3日、ソニーの上記業績説明会で明らかになったゲーム事業に関する考察記事を公開した。その記事で注目しているのが、説明会で言及された「PS5ハードウェアでの戦略的な価格設定による損失計上」である。この表現をわかりやすく言えば、PS5をより多く売ってゲーム機市場のシェアを確保するために赤字覚悟の価格設定をした結果、実際に損失を出した、となる。

 ソニーはPS5販売に伴って計上した損失を具体的な数字で公表していない。そうした損失を推測する手がかりになるのが、Bloombergが2020年2月に公開したPS5の製造コストに関する記事だ。その記事のソースとなっている「事情に精通している人物」によると、PS5の製造コストは450ドル(約47,000円)と見積もられる。

 実際に販売されたPS5はディスクドライブ実装モデルが499ドル(日本販売価格49,980円)、デジタル・エディションが399ドル(日本販売価格39,980円)なので、デジタル・エディションに関しては売れば5,000円以上の赤字になる計算だ。こうした赤字幅は憶測の域を出ないが、ソニーが言う「戦略的な価格設定」とはデジタル・エディションの価格を意味していると見て間違いないだろう。

 ビジネス系メディア『Venture Beat』が公開した3日付の記事もPS5販売に伴う損失計上について報じており、この損失はさらに拡大する懸念があることも指摘している。というのも、PS5をはじめとしたデジタルデバイスに搭載するチップの供給が世界的に逼迫しているからだ。チップの逼迫が長期化すれば、その価格が高騰する可能性もあり、PS5の製造コストがさらに上昇するかも知れない。

年度内に760万台販売を目指す

 ソニーが行った2020年度第3四半期の業績説明会の資料によると、PS5の販売を含む同社のゲーム&ネットワークサービス事業における2020年第3四半期(4月から起算のため10~12月が第3四半期となる)の売上は約8,800億円、営業利益は約800億であり、2020年度通年の売上見通しが約2兆6,000億円、営業利益見通しが3,400億円となり、2020年度は過去最高の利益が見込まれている。

 PS5の販売に関する説明もあり、要点をまとめると以下のようになる。

・昨年11月の発売以来、昨年12月末までに450万台を販売。

・2020年度内(2021年3月末まで)に760万台以上の販売を目指しており、計画通りの販売進捗ではあるものも、顧客の強い需要に充分に応えられていない。

・巣ごもり需要によりプレイステーション全体の需要も伸び、昨年12月の総ゲームプレイ時間が前年同月比で30%増加した。

・PS5ユーザのプレイステーション(R)プラスの加入率は、昨年12月末時点で87%。

・自社制作タイトル『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』は、昨年12月末までに約410万本の実売を記録

 以上のように、PS5の販売は供給が需要に追いついていないものも、事業全体としては先行きが明るいと言える。

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