芸人たちのドキュメンタリー『エレパレ』が示した、YouTubeにおけるリッチコンテンツの可能性
再生時間は2時間8分。本編はほとんど芸人たちへのインタビューで構成されており、字幕テロップやBGMは一切ない。YouTubeらしからぬ長尺と編集スタイルのため、スキマ時間で気軽にみられる類のコンテンツではないのだが、約128分があっという間に感じられるほど、グイグイ引き込まれる。
「エレパレ」的なものをより身近に感じていた吉本芸人たちは即座に反応。マヂカルラブリーの野田クリスタルはTwitterで絶賛し、レイザーラモンRGはラジオ番組で「エレパレ」動画を紹介した際、感極まって涙を流した。吉本芸人以外にも、東京03の飯塚悟志、テレビプロデューサー・藤井健太郎氏や佐久間宣行氏もSNSで「エレパレ」に言及するするなど、業界内で評判が広がっている。こうした芸人や業界人の口コミも手伝って、投稿された当初は10万程度だったエレパレ動画の再生回数はジワジワと伸び、今では85万回(1月18日現在)に達している。
コロコロチキチキペッパーズのナダルも昨年12月11日、同コンビのYouTubeチャンネルでエレパレ動画を激賞していたが、その際に「(動画制作に)2年ぐらいかけてやってるらしい」と明かしていた。テレビ番組や映画ではなく、YouTubeの動画1本にここまで時間と労力をかけることは極めて稀。ほとんど毎日更新されるニューヨークチャンネルにおいて、ことさら異彩を放つ。
本動画が、監督の奥田氏とニューヨークの情熱がなければ実現しなかったのは言うまでもない。こうした時間と労力、熱量を注いだリッチコンテンツは、チャンネルの格を高めてくれる。また、今回のように多方面で評判が広がり拡散されれば、動画をきっかけにチャンネルを知る「入口」として機能する可能性も高い。さらには、後々まで語り継がれることで恒常的に再生回数を稼ぐことも望めるだろう。
芸能人のYouTube参入が相次ぎ、それに伴い、そのタレントと懇意の放送作家やディレクター、プロデューサーがチャンネルの制作クルーに加わることも多い昨今。今回のエレパレ動画のように、平時の投稿とは一線を画する、YouTuberには真似できそうもない、テレビ畑の人間ならではのスペシャルなコンテンツを年に1度だけでも届けることができたなら、YouTube内における芸能人YouTuberの存在感はさらに高まるのではないだろうか。