芸人たちのドキュメンタリー『エレパレ』が示した、YouTubeにおけるリッチコンテンツの可能性
今、お笑いコンビ・ニューヨークのYouTubeチャンネルに昨年11月6日に投稿された「ザ・エレクトリカルパレーズ」と題した動画が話題を呼んでいる。本動画は、2011年に吉本興業の養成所・NSC東京校17期生内で結成された集団「ザ・エレクトリカルパレーズ」(以下、エレパレ)を題材にしたドキュメンタリーだ。
「エレパレ」は、主に選抜クラス内のメンバーで結成されたカースト最上位集団。自主的に団体のオリジナルTシャツやテーマソングを作って学内で幅を利かせ、複数の女生徒たちと関係を持っていたという。その後、エレパレメンバーの中には芸人としてデビューした者も何組かいた。しかし、こうした過去のイベサー的なノリを先輩芸人からいじられ、「エレパレ」だったことを恥じて多くを語らなくなり、いつしかその存在自体も忘れ去られていった。
「エレパレ」とは何だったのか――。東京NSC17期卒業生のオズワルド、空気階段・鈴木もぐら、ガーリィレコードチャンネルなどへのインタビューを通して、ニューヨークと本動画の監督を務めるチャンネル作家・奥田泰がその実態に迫っていく。
この動画は、青春の生々しさをえぐり出した傑作だ。若かりし頃に情熱を共有した仲間との思い出は、表面上キラキラと輝いて見え、大人になってから美談としてパッケージ化しやすい。
しかしその奥には、どうしようもない“イタさ”が秘められているものだ。『エレパレ』でいうそのイタさとは、自分たちだけのTシャツを製作してNSCの授業時に着ていったり、オリジナルのテーマソングを歌ったりしていたことだが、ここまで度が過ぎずとも若い頃、「こいつらと一緒ならなんだってできる」的なある種の無敵感を友人関係の中で覚え、今考えれば恥ずかしい言動をしていたという人は多いことだろう。
なので、ほとんど異世界に近い芸人事務所の養成所内での出来事が、まるで自分事のように身近に感じられる。映画が進むにつれて、いつの間にか自分が中学や高校で味わったカースト体験を頭の片隅に思い浮かべながら見てしまう。おそらく、映画序盤は「エレパレ」を軽蔑した人であっても、後半に差し掛かるにつれ「自分にもこんな青臭い時代あったな」と共感するはず。そして動画を見終えるころには、自分も「エレパレ」的なものの被害者であると同時に、当事者及び加害者だったのだと思わずにはいられない。