『うたわれるもの』が見出したSRPGの新たな可能性 『FE 風花雪月』との意外な共通点とは

『うたわれるもの』と『FE 風花雪月』の共通点

『スマッシュブラザーズ』でも活躍する『ファイアーエムブレム』第1作の主人公・マルス
『スマッシュブラザーズ』でも活躍する『ファイアーエムブレム』第1作の主人公・マルス

 一方、もうひとつの金字塔として名前を挙げたいのが、『ファイアーエムブレム』シリーズだ。1990年、ファミリーコンピュータでリリースされた『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』を初作とする同シリーズからは、これまで10以上のオリジナル作品と、いくつかのスピンオフ・リメイク作品、スマホタイトルなどが発表されている。最近では、2019年に発売となった『ファイアーエムブレム 風花雪月』の好評も記憶に新しい。数あるシミュレーションRPGのなかで、『オウガバトルサーガ』シリーズに唯一比肩しうる存在が、同シリーズなのだ。

 『ファイアーエムブレム』シリーズの魅力は、登場キャラクターたちのアイコニックな佇まいにある。シリーズが誕生した当初から、作中でそれぞれの個性が際立っていたことは言うまでもないが、それとは別に、一部の主要キャラたちは4コマ漫画などの二次創作へと活躍の舞台をひろげ、作品の物語とは独立した人格を持つようになっていった。先述の最新作『ファイアーエムブレム 風花雪月』では、そういったシリーズの魅力を逆手に取り、恋愛シミュレーション的な要素も採用。かつて男性プレイヤーをメインターゲットとしていた同シリーズは、老若男女を問わず愛される、新しいシミュレーションRPGの形を決定づけた。このようなアプローチもまた、『うたわれるもの』が2002年以降に取り組んできた“シミュレーションRPGとアドベンチャーの融合”と考えられるのではないだろうか。従前では、本来的に別と考えられてきた2つのジャンルは、約20年の時をこえて、親和性の高い分野と考えられるようになった。ここに『うたわれるもの』シリーズの先見の明を感じずにはいられない。

 近年では、『ディスガイア』シリーズや『戦場のヴァルキュリア』シリーズなど、新興タイトルの台頭も著しい同ジャンル。『うたわれるもの 散りゆく者への子守唄』の“逆移植”をきっかけに、過去の人気作品・シリーズに触れてみるのも乙かもしれない。

■結木千尋
ユウキチヒロ。多趣味なフリーライター。
執筆領域は音楽、ゲーム、グルメ、テクノロジーなど。カルチャー系を中心に幅広いジャンルで執筆をおこなう。
人当たりのいい人見知りだが、絶対に信じてもらえないタイプ。Twitter:@yuuki_chihiro

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