緊急事態宣言下でさらに注目 コロナ禍で誕生した「食送付エンタメ」の現在
手作りを“隠す”
さて、ここまで紹介してきたのは、食に「誰が送ったか」が紐付けられる事例であったが、食に「誰が作ったか」が紐付けられる事例も考察してみよう。
ここで紹介したいのは、「食」の配達が一般的になった社会情勢を逆手に取った「ドッキリ」の企画である。
「おこさまぷれ~と。」というYouTuberアイドルグループがUPした動画「【ドッキリ 】ウーバーイーツ頼んで1人だけ実は手作り弁当だったら気づく?気づかない?【検証】」では、ウーバーイーツでお弁当を注文し、メンバーに届けられたお弁当が、他のメンバーによる手作りになっていることに気づくか気づかないかを試すドッキリが繰り広げられていた。
「おこさまぷれ~と。」はコロナ禍以前から、ウーバーイーツを使った様々なドッキリを行なってきたが、このような企画はコロナ禍という状況と重なることで、さらにインパクトを増したように思われる。
もう一つ、別のドッキリを見てみよう。
YouTuberカジサックのチャンネルの動画「【ドッキリ】ウーバーイーツのお弁当にヨメサック が作った料理が入っていたら、カジサックは気付くことができるのか?」では、ウーバーイーツで注文したお弁当の中の一品が、配偶者の手作りに変更されているという仕掛けがなされていた。この動画でカジサックは、それを知らずにお弁当を食べきった後、「どの品が配偶者の作ったものだったか」を仕掛け人に質問される。
以上2つのドッキリがどのような結果に至ったか、ここではネタバレを防ぐために触れないが、重要なポイントは、これらのドッキリの過程で「誰が作ったのか」がフォーカスされているということである。
ドッキリをかけられた側は、自分が何気なく食べたものは誰が作ったのか、考えさせられることになるのだ。
会食はコロナ禍で行いにくい状態にはなったが、基本的に一緒に暮らしている人同士は、常に一緒の食卓を囲んでいる状態でも問題はない。このドッキリは、その「一緒に暮らしている人」の重要性を、あらためて浮かび上がらせる。
画面と“共食する”
さて、これら「食送付エンタメ」は、社会的にどのような存在になってゆくのだろうか。
一つの手がかりに「孤食」というキーワードがある。
農林水産省のウェブサイトによると、2017年の調査では2011年の調査に比べ、「週の半分以上一日の全ての食事を一人で食べている人」の数が増加していたそうである。
おそらくコロナ禍ではますます孤食の傾向は上がっているに違いない。食送付エンタメは、このような「孤食」に悩む現代人を精神面でサポートする一つの要素に成り得る。
そもそも食事の動画の配信は一定数の需要がある。例えばお笑い芸人・おかずクラブのオカリナは、自身のYouTubeチャンネル「ときどきオカリナ」に、ご飯を食べる様子ばかりをひたすらアップしているが、これだけでも大変な人気になっている。
コロナ禍で増えた「ご飯を食べながらの配信」は、ある意味ではその動画自体が「贈り物」である。
コロナ禍で孤食に悩む人々のもとに、誰かが会いに行って一緒にご飯を食べることは難しい。アンパンマンのように、自分の顔をちぎって渡せるくらいの精神を持つ人物がいたとしても、不特定多数と接触をしたらウィルスの拡散に寄与してしまう可能性が高いのだ。
しかし、食べる動画を届けることならできる。
食送付エンタメの配信者は、ある意味ではコロナ禍の英雄なのかもしれない。