銀座の街にリズムを作る「余白」の重要性 Ginza Sony Park永野大輔に聞く“都市と公園”の新たなあり方
ブランドのユニークさを追求するためには、テクノロジーに頼りすぎないこと
ーーコロナウイルスの感染拡大に伴って、私たちを取り巻く環境やライフスタイルが大きく変化しました。企画をする上で、社会情勢は意識されていますか?
永野:2018年に始めた当初は、この場に来てもらうことを前提としていましたが、コロナ禍においては、この場をおもしろくすることに加え、現地に来られない人をどう楽しませられるか、というテーマが加わりましたね。リアルでのアクティビティをデジタルにシフトするというやり方はしたくなくて、リアルの延長がデジタルで、2つをあわせて1つのアクティビティであるように設計しています。パークが「ソニーらしい」と言われるならば、デジタルでもそう言われたいんです。
ただそれってすごく大変で。現場に来てもらえると、どこを見渡してもソニーに包まれていて、ブランド体験としては最高ですよね。でもデジタルで、たとえばインスタライブやYouTubeライブをやりますってなったとき、ユーザーに1番近いのは、ソニーではなくてInstagramやYouTubeなんです。ソニーとユーザーとの間のブランド体験に別の要素が入るんですよね。ユニークさを追求するにおいても、フォーマットが決まっているのでなかなか難しい。
ーーテクノロジーを介して届けようと考えると、どこかのフィルターを通さなければいけなくなる。
永野:そんな中でも、少しずつヒントが見えてきました。その中の1つは、リアルと同じように、テクノロジーに頼りすぎないということです。必ずしもテクノロジーだけに頼らずともお客さまに楽しんでもらえるユニークなコンテンツを作ることは可能なんじゃないかと。テクノロジーはまずは手段として考えてみる。ソニーの人間がいうことではないかもしれませんが(笑)。
ーーPERIMETRONも同じように、「テクノロジーは便利だけど、そもそもコンテンツファーストであるべきで、その上で良いものがあればラッキー」とおっしゃっていました。
パークビルは「余白」のある街作りを牽引できるか
ーーパークの役目が終わって、ソニービルが再建設されても、以前と同じ役割のビルディングが作られるわけではないですよね。
永野:次の計画でも公園というテーマは変わらず、公園が縦に伸びるイメージです。今度は、公園をビルディングタイプで作ることへの「再定義」になりますね。
ビルディングタイプの公園というと、すぐに屋上庭園みたいな話になるんですよ(笑)。だけどそうではなくて、公園を公園たらしめているのは「余白」であるということを前提として、ビルディングタイプで、お客さまに今のパークと同じような体験をしてもらうにはどうしたらいいか、を考えるわけです。そうすると、商業ビルでも、テナントビルでもオフィスビルでもない、パークビルができて、それが「再定義」であり、世の中への問いかけとなって、未来へと繋がればいいなと思っています。
ーー世界で初かもしれないパークビルを建てて、ウォークマンのように模倣する企業が出てきて、その結果、都市に公園が増えたら社会にとっては有益なことですよね。
永野:コロナ禍においては、公園はソーシャルディスタンスがとれますしね。これからのビルディングの傾向を考えると、今って上へ上へと伸ばす時代じゃないと思うんです。特にコロナ禍において、オフィスの需要は減っていますし、オンライン化も進んでいる中で、そこまでフロア面積が必要かと言われると疑問ですよね。より「余白」があってもいいんじゃないかな。
そして何よりも、次のビルディングを建てる間、一旦公園にするってことをみんなが追従すれば、街に「余白」が増える。このプロジェクトの最中にも、東京の街には公園がいくつかできていて、「こういう使い方があるんだ」というヒントになったはずなんです。いい意味でやり方を真似してもらって、それが未来への一歩になったらいいなと思います。