糸田屯が選ぶ、2020年のゲーム音楽配信リリース作品10選

『Hylics 2』

Hylics 2

 奇才グラフィックアーティスト、メイソン・リンドロス(Mason Lindroth)が2015年に放ったシュールかつ異形きわまるRPG『Hylics』。カルト的な人気を博す本作の続編が満を持してリリースされた。音楽面では、メイソンが過去にアルバムジャケットイラストを手がけたニュージャージーのオルタナティヴ・ロック・バンド、Amigos, Amigos!のメンバーであるチャック・サラモン(Chuck Salamone)を共作者に迎え、ギター主体のサイケデリック・プログレを全面的に展開している。トロピカルでグズグズな聴き心地がたまらない。

『Fall Guys: Ultimate Knockout』

Fall Guys: Ultimate Knockout

 Mediatonic開発のオンラインスポーツアクション『Fall Guys: Ultimate Knockout』は、世界中でブームを巻き起こした。コーラスやスラップベースを織り込んだ高純度のシンセポップサウンドは、コンポーザーのユキオ・カーリオ(Jukio Kallio)とエンジニアのダニエル・ハグストロム(Daniel Hagström)によって入念に創りあげられ、数々のインディゲーム音楽を手がけてきたユキオのキャリア史上最大のヒットタイトルとなった。彼の音楽性については、連載第1回で詳しく紹介したので、こちらもぜひお読みいただきたい。

『Gunsport』

Gunsport

 ガンアクションとバレーボールを合体させた、2対2のエクストリームスポーツを繰り広げる、Necrosoft Games開発による『Gunsport』。クラウドゲームサービスGoogle Stadiaの配信タイトルのため現時点では日本未対応だが、音楽はインディーポップバンドThe Pains of Being Pure at HeartやシューゲイザーバンドThe Depreciation Guildの元メンバーにして、無類のJ-POPマニアとしても知られるカート・フェルドマン(Kurt Feldman)のプロジェクト、Ice Choirが担当。甘くしなやかなメロディを押し出した都会的なシンセポップサウンドに酔わされる。

『ベオグラードメトロの子供たち』

ベオグラードメトロの子供たち

 セルビア・ベオグラードを舞台に、ドット絵調のイラストとPC-98風のグラフィックで展開される、サークルSummertime制作のサスペンス&サイキックヴィジュアルノベル『ベオグラードメトロの子供たち』。チルアウトミュージックに定評があり、コンスタントかつハイペースな音楽活動を展開するDJ/バーチャルYouTuberの「バーチャルねこ」がゲストクリエイターとして参加し、エレクトロ、アンビエント、ヴェイパーウェイヴ、ポストロックなどを織り込んだ、抑制のきいたスコアで一味違った側面をみせる。サントラはMoguMallにて販売中。

『ビタミンコネクション』

ビタミンコネクション

 WayForward Technologies開発によるNintendo Switch用アクション『ビタミンコネクション』。ポップでキュート、そしてレトロフューチャーな趣の本作の音楽制作には、ジェイク・カウフマン(Jake Kaufman)率いるスタジオ「Mint Potion」が全面協力。メインコンポーザーを務めたトミー・ペドリーニ(Tommy Pedrini)マディ・リム(Maddie Lim)は、ピチカート・ファイブやFPM、capsuleにインスパイアされた渋谷系サウンドを核に、チップチューン、フュージョン、ヒップホップ、プログレ、フューチャーベース、演歌などを繰り出してゆく。Chiyoko Yamasatoらをフィーチャーしたヴォーカル曲も豊富に用意され、サントラは4枚におよぶヴォリュームとなった。

 

■糸田 屯(いとだ・とん)
ライター/ゲーム音楽ディガー。執筆参加『ゲーム音楽ディスクガイド Diggin' In The Discs』『ゲーム音楽ディスクガイド2 Diggin' Beyond The Discs』(ele-king books)、『新蒸気波要点ガイド ヴェイパーウェイヴ・アーカイブス2009-2019』『ニューエイジ・ミュージック・ディスクガイド』(DU BOOKS)。「ミステリマガジン」(早川書房)にてコラム「ミステリ・ディスク道を往く」連載中。

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