『スーパー・ニンテンドー・ワールド』に見え隠れする、業界のトップランナー・任天堂の矜持

 いま、経済の分野では『OMO(Online Merges with Offline)』という概念が注目を集めている。「オンライン」の接点(ネットショッピングなどの販売機会)と「オフライン」の接点(実店舗における販売機会)を融合させることで、新たなビジネスチャンス・消費者の体験を創出できるとする考え方だ。

 たとえば、家電量販大手のビックカメラが大阪にオープンした店舗は、あらゆる売り場・商品にスマホから読み取れるQRコードを貼り付け、ECサイト経由で商品をチェック・購入できるシステムを採用した。こうした取り組みにより、消費者の購買体験は、それぞれがメリット・デメリットを持った「オンライン」と「オフライン」の2軸ではなく、“良いとこ取り”のひとつの接点として、より有意義なものとなっている実態がある。任天堂が『スーパー・ニンテンドー・ワールド』のローンチで狙う「バーチャル」と「リアル」の融合も、こうした変革とたもとを連ねるものと言えるだろう。

 ゲームカルチャーはその性質から、「閉塞的で不健康」とされるシーンも少なくない。「一人遊び」「インドア」「視力・姿勢の悪化」「依存」といったワードと隣合わせにあるからだ。しかしながら、本来の同文化と対極の特徴(仲間と屋外で体を動かす)を持つ『スーパー・ニンテンドー・ワールド』の登場・浸透により、そのネガティブイメージが払拭されれば、ゲームカルチャー全体の地位向上も見えてくるのではないだろうか。任天堂の描く青写真には、多くの可能性が秘められている。

■結木千尋
ユウキチヒロ。多趣味なフリーライター。
執筆領域は音楽、ゲーム、グルメ、テクノロジーなど。カルチャー系を中心に幅広いジャンルで執筆をおこなう。
人当たりのいい人見知りだが、絶対に信じてもらえないタイプ。Twitter:@yuuki_chihiro

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