山田裕貴に聞く『先生を消す方程式。』と『頼田朝日の方程式。』で見せた“怪演のイマジネーション”

 いよいよ12月19日に最終回を迎えるテレビ朝日系ドラマ『先生を消す方程式。』。合わせて注目したいのが、ABEMAプレミアムにて配信されている、同作の“フライングドラマ”『頼田朝日の方程式。-最凶の授業-』だ。

 スピンオフ作品ではなく、“フライングドラマ”と銘打たれた同作は、『先生を消す方程式。』で副担任を務める頼田朝日が主人公となり、本編の物語とリンクしながら、隠された謎や真実に繋がるヒントを、本編より先にフライングして解明していくという異端の作品となっている。今回は最終盤の撮影を行った山田裕貴をインタビュー。さらに怪演を見せる後半の撮影秘話について語ってもらった。(編集部)

「頼田朝日ってマジの純粋な悪だと思う」

ーー本編第4話のラストで義経先生が死に、第5話のラストで生きる屍となって蘇るという、予測のつかない展開になっています。山田さんはこの台本を読んだ時、率直にどう思いましたか?

山田裕貴:ふふ……(笑)。そういうドラマがあってもいいじゃんっていうのは思いました。突飛なものって、僕はあんまり触れてきてなかったので、生き返っちゃうなんていうドラマがあっても面白いだろうなと。圭さんとも最初から「大成功するか、大外れするか」っていうのは言ってたので(笑)。僕らの力量をどこまで持っていけるか、自分たちが面白みを作る瞬間もしっかり用意しておかないとだなって。

ーーフライングドラマの狂気性、山田さんの怪演も話題になっています。

山田:すごく嬉しいですね。怪優とか言われたいなと思ってたんで。『情熱大陸』(TBS系)で「新時代の怪優」って紹介されたんですよ。めっちゃ気持ちいい(笑)。良さが出る役というか、狂気じみた役をやりたかったし、やれる自信があったのでもっと面白くしなきゃと思いますね。普通の役って難しいんですけど、こういう変わった役も難しいし、やりがいがあるし面白い。特に、「頼田朝日の方程式。」に関して言えば、長ゼリフだったり……でも、反省点が多いですね。勢いだけでいっちゃったなとか、声のボリューム、スピードの緩急だったり、難しいなと思いつつ。みなさんに響いてるんだったら、良かったなという感じですかね。

ーー山田さんの中で、頼田朝日のような役柄を待ってたというのも。

山田:「あ、俺のフィールドだ!」って感覚です。「そっち得意なやつ」みたいなイメージ。

ーーぴったり合っている?

山田:合ってるって自分で言うもんじゃないですけど、悪い方が好きなんですよ。あとは、やってきた役は“いい子”が多かったので。だから「あんな演技するんだ」って言ってる人もいれば、「あ、これが山田裕貴ですよね」って言ってる人もいる。案外、おかしなキャラクターってそんなにやってないはずなんですけど、おかしく思われてるんですね。

ーーここまでぶっ飛んでる役柄は今までなかったと。

山田:気持ちが分かる人しかいないですね。分からなくなったのは朝日が初めてです。ラストの方では「こいつ、なんて思ってるんだ」って。逆に、僕さえも分かんないくらいでやってた方が、理解不能でいいのかなって思ったりもしました。

ーー回を重ねていく毎に変化していく山田さんの演技に驚かされるのですが、演じている上で自身でも変わってきたなと思う部分はありますか?

山田:正直、誇張している部分はあるんですよ。こういうドラマだから。圭さんがズバッと締めてくれる分、僕が大暴れして「朝日ヤバイよね」って話題になる。そういったところは狙いにいってますし、回を追うごとに変わっていった気持ちとしては、だんだんスタッフさんが麻痺してくるんですよ。

一同:ははははは(笑)。

山田:「なにそれ!(笑)」って笑ってくれてたんですけど、だんだんと「足りない……。今日、朝日あんまりかな」みたいな。顔を伺うとだんだん怖くなってきて、「面白くないのかな……? 怖くないのかな。どうしよう、もっとやんなきゃ」ってなってくるという。

ーー本作と同じ鈴木おさむさんが脚本を担当した『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日×ABEMA)は、アドリブ合戦が加速していったドラマでしたが。

山田:アドリブは毎話あります。本編5話は完全にヤバイですね。(前野)静先生の病室周りは、「自由に動いてください」って言われて、自由にやった結果そうなったんで。僕が勝手にやっているので、より怖いと思います(笑)。

ーー怪演のイマジネーションはどのように湧いてくるんですか?

山田:こうやったら面白いだろうなって思いついたのをやっている感じですね。おかしいなと思うこと、普段だったら我慢していることを。例えば、机の上に乗っちゃうとか、急に病室のベッドに寝ちゃうとか。絶対ダメじゃないですか。思いついたらそのままやっちゃう。理性をなくすと出てくるんです。

ーー『頼田朝日の方程式。』での朝日の授業を聞いていると本編の義経先生の授業がいい意味に思えなくなってくる、というコメントもTwitterでは見受けられます。

山田:僕は、頼田朝日ってマジの純粋な悪だと思うんですよ。いじめられてたからどうこうじゃなく、負の感情を全部役を通して伝えようと思っていて。ドラマ史上、僕史上で、ただの悪になればいいなって。なんなら言ってること全部嘘くらいに思ってもらいたい。それくらい考えて観て欲しいですね。

ーードラマで見せている面も、もしかしたら嘘かもしれない。

山田:悪が集約されている人間に見えればいいなと思うので、そういったところが朝日の面白いところなのかなと思います。

ーー田中圭さんがインタビュー(https://realsound.jp/movie/2020/11/post-650289.html)の中で山田さんについて「演じる上で気を使わなくていいし、任せられるし、気を使わずにぶつかり合いができる関係性」「現場では裕貴が癒しです」と話していました。

山田:より深く話せましたね。がっつり共演シーンがあるのは5作目くらいなんですよ。映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』(2021年5月公開)とドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(フジテレビ系/2018年)、この『先生を消す方程式。』なんですけど。作品の話だけじゃなく、「裕貴は俳優として報われる立ち位置になってきてるのかな」って話をしてくれるんです。「まだまだです」って思いながら、「いや、抜けてきてるんじゃない。30歳って節目だし、生き残れるか、生き残れないかの瀬戸際だと思うけど、裕貴はそのままで大丈夫だと思うよ」って。「あのシーンまじ悔しいっすわ」っていう演技のシーンも、圭さんにしてみれば可愛いと思ってくれているみたいなんです。

 一喜一憂して悔しいとか言ってるのが、かつての自分を見ているようだと感じてくれているのか。圭さんも主演をバーッとやってきたわけではなく、僕も脇役が多いし、主演が多い俳優でもないので、そういったところで重ねてくれているのか。いついかなる時も裕貴は変わってないみたいなところを見てくれている、そういった連絡もくれましたね。「ご飯とか行けたらいいね」とも言ってくれて、こういうご時世だから「僕は『頼田朝日の方程式。』がやばいんで家にこもってます」って言ったら、「お前のそういう真面目なところが好きよ」って言ってくれたり。素敵なお兄さんですね。もちろん、僕だけじゃないんですよ。現場の雰囲気も見てくれているし、長くなる日にはそっとみんなに差し入れをしてくれたり。改めて、こういう人がたくさんの人に愛されるんだと思いました。

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