帰還を果たしたK/DAと、新たなアプローチでシーンに挑むaespa 現実と虚構を繋ぐバーチャルK-POPが示す未来
現実世界と仮想世界が"同居する"SMカルチャー・ユニバースの始まりを示すaespa
『LoL』の中で構築されてきた物語やキャラクターによるユニバースを拡大する存在であるK/DAだが、aespa、そしてSM ENTERTAINMENTの場合はなんと完全にゼロの状態から新たなユニバースを作り上げようとしている。
10月28日、SM ENTERTAINMENTの代表であるイ・スマンは初開催となる「世界文化産業フォーラム2020」で、今後、同事務所が手掛けるエンターテインメントの核となる『SMCU(SMカルチャー・ユニバース)』の構想について語り、その最初のプロジェクトがaespaであることを発表した(参考:https://www.allkpop.com/article/2020/10/lee-soo-man-describes-the-avatar-members-of-aespa-promotion-plans-during-his-2020-world-cultural-industry-forum-talk)。そして「セレブリティとアバターの未来像を投影した、現実世界と仮想世界の境界を超えた革新的な集団」として紹介されたaespaがどのような存在なのかを明らかにしたのが、冒頭の"MY, KARINA"の映像である。
"MY, KARINA"では仮想世界の住人であるae-カリナが「"SYNK"が現実のメンバーとバーチャルのメンバーを繋いだ」、「"NAVIS"がいたおかげで二人が繋がることができた」といった、現時点では謎の単語を用いて現実と仮想、2人の"カリナ"の出会いの背景を説明している。ae-カリナが存在する仮想世界はどのようなものなのか、何故2つの世界が繋がるようになったのかといった背景の物語についても全く不明のままだ。恐らく、"SYNK"や"NAVIS"は、このユニバースを構成する要素の一つであり、今後の活動の中で一つひとつの謎が解き明かされ、そして新たな物語を描いていくのだろう。
イ・スマンは前述のフォーラムで「現実世界のメンバーと仮想世界のアバターメンバーは別の存在であり、アバターメンバーはAIの脳を持っているため、リアルメンバーとの会話やサポート、仲良くなったり、情報を共有したり、世界を行き来したりすることまで可能になっています」と語っているが、aespaがK/DAのようなバーチャル・グループと最も異なる部分はここにある。完全にバーチャルな存在であるK/DAに対して、aespaの仮想世界へのアプローチは「現実世界との共存」にあり、2人のメンバーがそれぞれオンライン/オフラインを問わない様々な形式で活動し、さらに両者が交わることで、今まで見たことのない未来的な景色を創り上げることがゴールとなっているのである。そしてこれは前述の通りSM ENTERTAINMENTによるユニバースの序章であり、今後デビューする様々なグループによって、更にこの世界を拡大していく予定である。
元々、BTSの『花様年華』を筆頭に、K-POPにおいてコンセプチュアルな世界観を構築し、作品によって物語を構築していくというのは決して珍しい取り組みではなく、MVやアートワークなどに散りばめられたヒントを元にファンが考察したりファンアートを作るといった、小規模なユニバースとも言える文化は以前より存在するものだ。だが、aespa、そしてSMCUはより大規模なユニバースを構想しており、まさに大手事務所だからこそ実現できる、極めて壮大で、もはや無謀なのではと思ってしまうほどの試みなのである。