動画世代に“楽曲を視覚的にアプローチ”するには? Spotifyのムービー機能『Canvas』の成功例を見る
『Canvas』を活用したマーケティングの成功例
・SuperM-『Canvas』を通してファンを表現に取り込む-
昨年デビューしたK-POPアーティスト・SuperMはTwitter上でファンに、自身の写真をタグ付けでアップするよう呼びかけた。のちにそれらの写真はまとめられて、顔は特定できないように編集され、1stミニアルバムの収録曲7曲の『Canvas』に追加されていた。自分がSuperMの世界観の一部になっていることに喜んだファンは何度も再生して、周りにも見るように勧めただろう。この取り組みが功を奏し、SuperMは“デビュー時にBillboad200のトップを飾った初のK-POPアーティスト”となった。
・Billie Eilish-『Canvas』がオンラインライブの伏線に-
先日行われたBillie Eilishのオンラインライブでは、毒々しくも感情に深く訴えかけるBillieらしい映像演出が話題になったのだが、その演出の要素となる動画を、ライブの日までに一曲ずつ『Canvas』で公開していたことが後から分かった。ライブを楽しみに前々からSpotifyで楽曲を聴き、『Canvas』を目にしていたファンにとっては、「あの『Canvas』がこのライブの伏線だったのか」という発見があり、より演出を楽しめただろう。今後のオンラインライブでこの方法を取り入れるアーティストが増える可能性は大きい。
このように、たった3秒から8秒の『Canvas』機能だが、さまざまな活用法を編み出して、マーケティングに成功しているアーティストが増えている。Spotifyのアーティスト向けHP「Spotify for Artists」では、『Canvas』を作成する時のポイントについてまとめられたコラムが掲載されている(「10 Tips to Get the Most from Your Canvas」。『Canvas』は楽曲とシンクロするわけではないから映像と歌詞をシンクロさせる動画は上手くいかない、曲のタイトルとアーティスト名が入らないような動画を考えて、など、ためになる指摘があるので要チェックだ。
今後、Spotifyは動画サービスをさらに展開していくことを発表しており、『Apple Music』の『Apple Music TV』同様、音楽ストリーミングサービスによる映像コンテンツの市場競争が激しくなることが予想される。Spotifyは過去に、Netflixに似た内容の『Spotify TV』を立ち上げようと計画していたことが『Spotify 新しいコンテンツ王国の誕生』という本で明らかにされているが、この『Canvas』機能は、Spotifyの映像コンテンツの中でも成功例といえるかもしれない。もしくは、さらなる映像コンテンツの開拓のための実験サービスか。果たして“音楽サービスとしての映像コンテンツ展開”という分野で成功するのはどのサービスになるだろうか。
(画像はhttps://artists.spotify.com/blog/10-tips-to-get-the-most-from-your-canvasより)
参考文献
Alternative Press「YOU COULD BE WATCHING EVEN MORE MUSIC VIDEOS IN SPOTIFY SOON」
https://www.altpress.com/news/spotify-in-app-video-player-reports/
Music Ally「SpotifyがCanvas機能を使えるアーティスト数を拡大、韓国SuperMの活用法」https://www.musically.jp/news-articles/spotify-makes-canvas-less-blank
Spotify for Artists「10 Tips to Get the Most from Your Canvas」
https://artists.spotify.com/blog/10-tips-to-get-the-most-from-your-canvas
https://twitter.com/yukako210/status/1320190235498590208