ソフトバンクのAI活用事例 新薬、新素材、教育、メガネ、自動運転、住宅……そしてTikTokも

ソフトバンクのAI活用事例

 今年はコロナ禍の状況を鑑み、オンライン開催となった『SoftBank World 2020』。本稿ではソフトバンクグループの孫正義氏(代表取締役会長兼社長)が行った基調講演から、主に後半で語られた内容を記す。なお前半では、NVIDIAのジェンスン・フアン氏(創業者/CEO)との対談を行っていた。

新薬、新素材、医療などでの活用事例 教育は2億5000万のデータ

 孫は後半、まず「AIのコンピューティングプラットフォーム。これを世界中のテクノロジーカンパニー、医療、教育機関、研究所、様々なところでどんどん活用する。そういう時代がついに来た」と切り出した。そして「AIを実際に活用した新しいスタートアップの企業が、続々と生まれてきている。約100社ぐらいビジョンファンドで投資しているが、その中から、AIを特に活用している企業を紹介したい」と、同社グループのAI活用事例について語っていった。

Vir Biotechnology

 新型コロナウイルスのパンデミックと向かい合うために、すでにAIがその力を発揮し始めている。Vir Biotechnologyは設立から数年の若い会社だが、今年、アメリカ市場で上場した。まず数百万の抗体の候補を見つけて、その中から数百に絞り込み、コンピューティング上で1日に1千万から3千万の規模を組み合わせ、AIで洗い出していく。その結果として、2つの抗体が最有力候補として臨床試験に入っている。じきに試験が終わり、医療用の抗体として大量生産が始まる。

Zymergen

 新しい素材をどうやって開発するのか。Zymergenでは新素材そのものを開発しており、すばらしい成果を上げ始めている。AIを使って実験をロボットで自動化し、圧倒的に速く効率よく正確にテストを行う。そうした結果、今まで存在していないような新素材ができる。どういうメリットがあるのかというと、1つの新素材を作るのに開発コストが300億くらいかかっていたところ、10分の1のコストでできる。また開発には10年くらいかかるところ、半分の5年くらいでできる。画期的なコストと開発期間の短縮から、分子レベルで新しいものを発明していくところでAIが成果を上げている。

XtalPi

 面白くて、似たような話だが、こちらのXtalPiは新薬。従来は分子レベルのシミュレーションをしていたため、精度も低く、カバレッジ(網羅率)も狭かった。XtalPiは量子物理学の世界で、クラウドとAIを結びつけて、ロボットで続々と新しい組み合わせを作り出していく。予測のスピードが10倍になっており、量子レベルで新しい薬をシミュレーションしながらどんどん開発していく。

Biofourmis

 こちらも同じ医療の世界だが、Biofourmisでは、さらに臨床データを徹底的に使って、心臓疾患を事前に予測する。従来の患者410万人のデータを使って、バイオマーカーや症状を分析し、色々な診断の手法、例えばどんな診断、どんな治療、どんな薬を処方したら、結果どうなったかというのも全部データ解析している。もし14日前に心不全を起こすと教えてもらえるとしたら、そして適切な治療だとか、薬の処方だとか、専門の医者に診てもらえるとしたら、命が助かる。99%の精度で14日前に予知してくれる。そして感度。不整脈の検知では91%、特異度では98%と、専門医を超えるような精度が出てきている。また14日前に分かれば再入院率が70%減る、38%も医療費が減るという実績が上がってきている。

Zuoyebang

 次は教育で、これはZuoyebangという面白い会社。学生には、問題が解けない、どうやって解けばいいのか分からない、というような悩みがあるのを解決する。問題をスマホのカメラで撮ると、瞬時に答えの解き方や答え合わせができてしまう。まずアプリが問題を理解しなければならないため、AIを使って2億5000万問のデータベースを蓄積した。そこから適切にマッチングさせて、その答えを解く手順を教える。すでに中国では月間アクティブユーザーが1億7000万人いる。大事なことは、実際にその生徒の学習能力が上がってるかどうか。生徒が自分で判断して答え合わせをして、間違ってたら答えの手順が分かる。AIが正しい答えを出してくるだけではなく、理解しているのか、続々と類似問題を出してくれるため、類似問題も解ける能力が生徒につくということ。もちろん試験の時は使えないが、試験の成績結果もどんどん良くなっていく。

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