警察はAIをどう活用? 顔認証AI禁止令や誤認逮捕など、インドやアメリカの動向から考える

警察はAIをどう活用?

 地震予測AIと同様、こうしたプレディクティブ・ポリシングのAIは発生頻度の高い犯罪を認識する傾向にあり、例えば毎週木曜に路地で何十件にも及ぶ犯罪が起きているとAIが判断した場合、毎週木曜に路地へ警察を配置するよう指示が送られる。その場合、犯罪が起こると推定された時間帯にその場に居合わせたすべての者に対し、疑いの目がかけられることになる。ロサンゼルス警察によると、「ジャージを着用している」「通りを歩きながら誰かとおしゃべりをしている」という要件を充足した者は、AIアルゴリズムよりギャングと看做され、逮捕される可能性が高いという。

 フロリダ州パスコ郡では2011年以降、犯罪が起こる前に未然に防ぐことを目的に、プレディクティブ・ポリシングの「インテリジェンス・プログラム」を実施している。プログラムを通じて財産を奪う犯罪の数が減少し、功績をあげたのは事実だが、その一方で、犯罪と無縁の人へのハラスメントや脅迫が問題視された。また、些細な違反を犯した暁には、数ヶ月の間に数十回も自宅や友人の家、両親の職場に警官が現れ、監視体制が敷かれるということが行われたため、まるでギャングのような非民主的な保安官の対応に非難の声があがった。

 市民の安全を守るためのツールであるはずが、結果的に市民の不安を煽るものとなってしまっては本末転倒である。とはいえ、プレディクティブ・ポリシング分野においては、世界の多くの企業や大学、研究所が利益化を見込んで参入しており、いまさら撤退するわけにはいかないという経済的事情がある。AIにより入手した情報はあくまでも参考材料に過ぎず、最終的に人間である警官の鍛えられた洞察力で判断を下すしかないのかもしれない。

(画像=Pexels

■大澤法子
翻訳者、ライター。AI、eスポーツ、シビックテックを中心に動向を追っている。

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