2020年、VRゲームの歴史が変わったーー『Half-Life:Alyx』などのヒットなどから分析
2020年は他にも、様々なタイトルが発売されている。たとえば、執筆時点ではOculus Store独占タイトルとなっている『Phantom: Covert Ops』は、カヤックを漕ぎながら旧ソ連の海軍基地に潜入するVRステルスアクションゲーム。VRならではの身を隠す緊張感と、ステルス+FPS要素の組み合わせが話題になり、発売から数週間で100万ドルを突破した。
また、2018年の発売以降長く親しまれている大ヒットVRリズムゲーム『Beat Saber』の系譜にあり、「音楽に合わせて敵を撃つ」という音ゲーとシューティングを組み合わせた『Pistol Whip』も話題だ。リズムゲームでありながら、敵の銃撃を避けて敵を撃つ順番や残弾数を考える必要があり、VRゲームならではの立体的な空間を生かしたステージも面白い。
今後VRゲームのトレンドになっていきそうなのは、対人戦形式のアクション&FPSタイトルだろう。中でも今後楽しみなのは、2020年内に発売が予定されている、10人対10人のFPSタイトル『Frostpoint VR: Proving Grounds』。プレイヤーはそれぞれチームに分かれ、クリーチャーが徘徊する南極で、廃墟となった軍事訓練基地の制圧を目指す。戦う2チームとは別にエネミーも登場するPvPvE(プレイヤーvsプレイヤーvs環境)形式のため、ド迫力のVR空間で、複雑な駆け引きなども必要なバトルが楽しめそう。自宅にいながら南極を舞台にした臨場感たっぷりのサバゲーが楽しめるのなら、やらない手はないだろう。
2019年にサービスがはじまった『ソード・オブ・ガルガンチュア』も、この夏以降にPvP(プレイヤーvsプレイヤー)モードとなる対人戦「デュエル・オブ・ガルガンチュア」(仮)の実装を予定。このゲームの最大の魅力は、近距離戦ならではのド迫力な剣戟バトルが楽しめること。武器の持ち手が利き手であるかどうかや、腕を振り下ろす強さなど、様々な要素がダメージ量に反映されるため、戦略を練りながら相手を倒す必要がある。こうしたプレイヤー対プレイヤーのVRゲームは、通常のPvPとは一味違う体験になっていきそうだ。
また、EA傘下のRespawn Entertainmentによる『Medal of Honor: Above and Beyond』や『Star Wars:スコードロン』といった人気シリーズの新作VR作品も続々登場予定。個人的には、2021年1月に発売予定の『HITMAN 3』のPSVR版が楽しみだ。この作品は「World of Assassination」3部作の完結編。既に公開されている映像を観る限り、「HITMAN」シリーズらしい「変装してターゲットを追尾する緊張感」などが、VRによって何倍にも増しそう。以降も、人気タイトルがVR化していく機会はますます増えそうだ。
PSVR用タイトル『Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト』や、『アークナイツ』の公式生放送で公開されたアーミヤのバーチャルモデルを使った映像など、人気ソーシャルゲーム由来のキャラクターに焦点を当てた作品/宣伝にもバーチャルな技術が続々と使われはじめていて、この技術が今後どんなふうに活用されていくのかも気になる。
タッチスクリーンの普及などによって指で直接的に情報を操作できるようになったのと同じように、コントローラーによって代用されていたプレイヤーの動きが、VRゲームではプレイヤーの挙動をそのまま反映する、人々のリアルな動作に紐づいた「体験」に変わる。これがVRゲームの世界で起こっていることであり、これから様々な形で、この仕組みを利用した新しいゲーム体験が生まれていくことだろう。近年はVRゲームをはじめる敷居も下がってきているため、気になる人は、この機会にぜひとも色々な作品に触れてみてほしい。
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。