バーチャルヒューマンの“起用”は広告のあり方を変える? 貝印×MEMEやGU×Yuの例から考える

バーチャルヒューマンが変える“広告のあり方”

 髪を無造作に結んだ女性が両腕を上にあげて脇毛を見せる、なんとも目を引く貝印の広告が公開された。脱毛・剃毛の多様性を問うこの広告が、SNSを中心に話題となっている。

 なぜなら、この広告にモデルとして起用されたのが、バーチャルヒューマンのMEMEだからだ。

 バーチャルヒューマンを広告塔として起用した企業は、貝印が初めてではない。今回は、企業の活用事例などを踏まえ、新時代のモデルとして注目されているバーチャルヒューマンの可能性について、探っていきたい。

男女600名のリアルな脱毛への意見が反映された貝印広告

 バーチャルヒューマンのMEMEが、腕を上げて脇毛を堂々と見せる印象的なビジュアルには、男女のリアルな脱毛に対しての声が反映されていた。

 貝印は、全国の15〜39歳の男女600名を対象に「剃毛・脱毛についての意識調査」を行った。

 貝印株式会社調べによると、「男性が体毛を処理しても良い」と思う人が89.8%、「女性が体毛を処理しなくても良い」と思う人が42.8%。「ファッションや髪型のように、剃ることは自分自身で自由に決めたい」という意思がある人は90.2%にものぼったという。

 電車に乗れば脱毛サロンの広告が目に飛び込み、YouTubeで動画を見れば脱毛アイテムについての広告が嫌というほど流れてくるのが、私たちの日常における脱毛広告のあり方だった。

 その日常の中で大きくなった「剃ることは自分自身で自由に決めたい」という意識を反映させたコミュニケーション広告が、脱毛のあり方に一石を投じている。

バーチャルヒューマン・MEME起用の真意とは

 貝印の広告にモデルとして起用されているのは、バーチャルヒューマンMEME(メメ)。

 MEMEはCGで作られた人間だが、従来の通念的な美しさにフォーカスしたバーチャルヒューマンとは異なる面を見せている。
顔にはあざやそばかすがあり、本人はコンプレックスに感じているが、ポジティブに個性と捉える面も持つ。社会や身の回りで起こることに目を背けず、「リアル」であることがMEMEのモットーだ。

 MEMEのInstagramでは、コーヒーを飲んだり、掃除をしたりといった日常の様子から、CGではないリアルな男性と恋愛するシーンまで綴られているほど、リアルに徹している。

 なぜ、貝印はMEMEを広告モデルへ起用するに至ったのだろうか。

 それは、特定の人間のモデルだと、その人自身の思想が、広告のメッセージに影響してしまうからだという。

 モデルやタレントを起用すると、そのタレントのフィルターを通して広告のメッセージを受け取ることは避けられない。バーチャルヒューマンを起用することで、メッセージそのものを投げかけることに成功していると言えるだろう。

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