近い未来、役者の半分はロボットになる? アンドロイド俳優やロボット演技などの試みから考える

近い未来、役者の半分はロボットになる? アンドロイド俳優やロボット演技などの試みから考える

 ロボットは人間にどれほど“迫れる”のだろうか。それを考える上で興味深いニュースがあった。

 石黒浩らのアンドロイド、エリカが映画初主演へ ─ 史上初、AIが主人公演じる

 ロボット研究で有名な石黒浩教授の作ったAI搭載のアンドロイド、エリカがハリウッド映画に主演するというのだ。映画の共演者は人間になる予定で、エリカは人間に混じって、唯一のアンドロイドとして映画の中で芝居を披露するというわけだ。

 アンドロイドに役者が務まるのか、多くの読者は疑問に思うだろう。プロの芝居とはただの動きの模倣ではない、複雑な心を表現するものだと多くの人は信じているはずだ。いくら優れたプログラムのAIを搭載していても、役者のような感情表現は難しいのでは、という疑問は当然湧くだろう。

 しかし、じつは石黒教授のアンドロイドが演技に挑戦するのはこれが初めてではない。すでに、ここ日本で先例がある。1つは平田オリザによるロボット演劇、もう1つは深田晃司監督の映画『さようなら』だ。

 これらの実績を見ていくと、アンドロイドにも演技によって感情表現ができることがわかってくる。それどころか、人間の役者に対して優位な点すらあることにも気付かされるのだ。

ロボット演劇が明らかにしたアンドロイド俳優の優位性

 演出家の俳優への演技指導は、大きくわけて2つの方向性がある。

 1つは、登場人物の感情面から作りこんでいくタイプだ。「メソッド演技」という演技法を聞いたことがある人もいると思うが、これはアメリカの映画・演劇界で生まれた演技法で、役柄を徹底したリサーチによって掘り下げ、内面からその人物になりきることによって、リアルな仕草やセリフの抑揚を引き出すもの。これは、典型的な感情面からのアプローチだ。演出家もこうした感情の掘り下げを主として行うタイプがある。

 もう1つは、そうした内面的な説明はせず、具体的にどう動くかを役者に指示していく方法だ。「ここからここまで歩いて、これを持ち上げて」とか、「あと2秒間をあけてからこのセリフをしゃべるように」など、動きやしゃべりだすタイミングを具体的に指示し、外面の動きから役を作っていくタイプだ。

 大抵の演出家は、この2つを使い分けながら、役者と一緒に芝居を作り上げていく。どちらの配分が多いかは、役者や演出家によって様々だが、中には極端にどちらかに偏ったやり方を好む者もいる。

 石黒教授とともにロボット演劇を作った劇作家、平田オリザは後者のやり方を重視する。彼は役者に感情の説明などはほとんどしないらしい。石黒教授は平田オリザの演技指導を目にした時のことを、自著でこう述懐している。

 「私が驚いたのは、平田氏の演出方法である。平田氏は、役者に対して一切精神論を口にしない。『もっと感情を込めて』などの、解釈が難しいことは何一つ言わないのである。その代わり、役者の立ち位置や間の取り方については非常に厳密である。50センチ前に来てとか、0.3秒間をあけてというように、まるでロボットを制御するように、役者に指示を与えていく」(『ロボットとは何か 人の心を映す鏡』講談社現代新書)

 このような厳密な動きのコントロールは、生身の人間よりもプログラムで制御可能なアンドロイドの方が上手くやれるのではと、石黒教授は感じたそうだ。実際、稽古中に生身の役者たちは、平田氏の細かい演技の修正を一度でできないことがあるが、アンドロイドはプログラムを調整してしまえば、一発で平田氏の支持通りにできるようになる。

 こうして作られた演劇を見た観客のほとんどが、実際にロボットの役者に心を感じたとアンケートで回答したそうだ。芝居とは、内面から役になりきった役者が演じるからこそ、感情が見る人にも伝わると考える人が多いかもしれないが、実は高度に練られた動きの型によって感情を感じさせることも可能なのだ。

TPAM in Yokohama 2011: Robot-Human Theatre

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