Netflixオリジナル『ハイスコア:ゲーム黄金時代』にみた、「キャラクター」の侵略的広がり
別の例を挙げるならば、1991年に登場し、「格ゲー」という一大ジャンルを築いた『ストリートファイターII』(第5話に登場)でも、似たような形で「シンボルキャラクター」の重要さが見られる。今作には世界各国を代表する8人のファイターが登場するが、それぞれのファイターは、いわば国々のイメージを極端に擬人化したシンボルとして存在している。例えば番組内でも紹介されるエドモンド本田というキャラクターは、基本的には力士の姿をしていながらも、くまどりをしていたり、ホームの闘技場が銭湯だったりするなど、日本という国の(海外からの)イメージを一つのシンボルとして見立てる形で誕生したと言えるだろう。
さらに、8人の「キャラ選択にはおのずとプレイヤーの技量や性癖が現れ、ゲーマーとしての自己表現にもなりえた」(中川大地、2016『現代ゲーム全史:文明の遊戯史観から』 PLANETSより)ことで、プレイヤーの間にコミュニケーションが発生し、(80年代後半には低迷を極めていた)ゲームセンター文化の復活をもたらした。このように、記号やイメージをキャラクター(生命)に見立てる想像力は、ヒトのシンボル化能力に訴えかけるだけではなく、コミュニケーションの領域にまで侵食することでさらなるゲーム文化の広がりをもたらしたのである。
以上見てきたようにビデオゲームの普及には、プログラムが再現した記号を、シンボルとしてのキャラクター(生命)に見立てる想像力が大きく貢献している。ここにはシリコンバレーからもたらされた最先端の情報技術と、日本人が古くから持っていた万物に対する想像力との奇妙な融合が見出せるであろう。
今回紹介した諸作品やキャラクターたちは、開発者へのインタビューやプレイ動画とともに、『ハイスコア:ゲーム黄金時代』にて詳細に語られている。ゲームファンなら、いや、そうでなくともこれらのキャラクターに少しでも愛着を抱く方なら必見の番組だ。
■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『ハイスコア: ゲーム黄金時代』独占配信中