「初の5G iPhoneなのに低価格化」はなぜ起こる? 著名アナリストがiPhone 12を分析

 圧倒的な高速大容量の通信システムである5GをiPhoneで初めて搭載するiPhone 12シリーズ。高性能ながら、価格帯もアンドロイド端末と遜色ないか、むしろ安くなるのではと言われている。

 これまで高嶺の花だったiPhoneの低価格化は、なぜ起こったのか。そしてそれは、どのようにして実現されるのだろうか。

当初は値上げが予想されていたiPhone 12

 『BGR』は、iPhone 12シリーズのデザインを異なるカラーオプションのコンセプトレンダーで掲載している(参考:https://bgr.com/2020/08/24/iphone-12-leaks-design-images-5-4-inch-colors/)。

 iPhone 12シリーズの目玉は、なんといっても5Gだが、もう一つの大きな特徴は、手頃な価格だ。スマホメーカー各社は当初、5G移行に際して、大幅な値上げを余儀なくされた。例えば、競合するSamsung Galaxyのフラッグシップ・スマホの小売価格は、200ドル~300ドル増加していた。

 そのため、Appleも値上げに踏み切るのではないかという憶測が大勢を占めていたが、リーク情報ではiPhone 12が699ドル~、iPhone 12 Maxが799ドル~、iPhone 12 Proが1049ドル~、iPhone 12 Pro Maxが1149ドル~になると言われるなど、「値下げ」の報道が多数を占め、市場が震撼したのだった。

 高級スマホの地位にあるiPhoneだが、ローエンドまでユーザーの裾野を広げるために、価格を抑えることに躍起になっている。Appleは、iPhoneではなく「iPhoneを利用したその先のサービス提供」で収益を伸ばすことを目指しているからだ。

5Gで最大135ドルの増加、あの手この手でコスト低減の努力

 では、どのようにAppleは、iPhone 12シリーズの値下げを可能にしたのだろうか。Appleの内部事情に詳しいTF International Securitiesのアナリストであるミンチー・クオ氏は、5GテクノロジーのSub-6GHz は75〜85ドル、mmWaveは125〜135ドルAppleのコストが増加すると算出している。

 ワイヤレス充電移行を踏まえて、Appleは、電源アダプタをiPhone 12シリーズに同梱しないと言われているし、EarPodsも付いてこない可能性がある。しかし、それだけでは到底、5Gのコストは吸収できない。

 そこで、Appleはサプライヤーに広く“値下げ圧力”をかけているというクオ氏の見解を『MacRumors』は伝えている(参考:https://www.macrumors.com/2020/08/20/kuo-iphone-12-battery-board/)。

 クオ氏は、よりシンプルなハイブリッドバッテリーボードの設計を採用することで、生産がより簡単になり、iPhone 11シリーズのコンポネントよりも40〜50%安く抑えていると分析。Appleは、生産過程を見直すことで、5G技術のコスト増加を相殺しているという。

 もちろん、重要なコンポネントを安上がりにして、iPhone 12シリーズの性能は、大丈夫なのだろうかという懸念の声も『Forbes』を筆頭に聞こえてくる(参考:https://www.forbes.com/sites/gordonkelly/2020/08/26/apple-iphone-12-release-battery-life-design-upgrade-iphone-11-pro-max-update/#757fe5f35542)。

 しかし、新たに採用されるApple A14チップは、性能が向上しており“ゲームチェンジャーレベル”になると言われており、バッテリーの持続時間は、低下させることなく、逆に向上しているという。

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