『Apex Legends』は予定調和を打ち砕くーーストーリーテリングとシステムに宿る“奥深さ”を考える

『Apex Legends』は予定調和を打ち砕くーーストーリーテリングとシステムに宿る“奥深さ”を考える

 前編では『Apex Legends』が持つ大きな特徴であり、ファンアート文化を活性化させるほどの魅力的である世界観と物語がいかにして構築されてきたのかについてまとめてきた。

 とはいえ、ここで触れた「断片的な情報によって全体像を構築する」、「各レジェンド(キャラクター)の物語を作り込み、リアリティを与える」という試みはローンチ当時から今に至るまで継続されてきた取り組みであり、一部のアプローチは『フォートナイト』や『オーバーウォッチ』等でも用いられている手法である。『Apex Legends』がよりストーリーに重きを置くようになったのは、2020年2月より開始したシーズン4、そしてさらに大きく舵を切ったシーズン5である。具体的には、それぞれの新レジェンドとして登場したレヴナントとローバの存在が本作を大きく変えることになる。

 話は2020年初旬に遡る。オンラインゲームではよくあることだが、そもそも次シーズンの情報は多くの場合、公式による発表よりも先にゲームデータを解析した部外者によるリークで漏れてしまうことが多い。シーズン4の開幕を目前に控えた状況で、本作も例に漏れず「新レジェンドはフォージ」という情報がリークによって広がることになる。その後、公式にフォージの登場がアナウンスされ、開発者インタビューではある程度の詳細が語られ、残るはシーズン4のローンチトレーラーを待つのみという、予定調和な状態となっていた。

 その状況下で突如公開されたのが、そのフォージが何者かの手によって殺害されるという衝撃の内容を描いた短編アニメーション、そして公式twitterによるフォージの死亡を伝える投稿である。その後、ローンチトレーラーによって、”本当の”新レジェンドとして、フォージを殺害した張本人であるレヴナントの登場がアナウンスされた。

 本来「プレイヤー同士が殺し合うだけ」と捉えられがちなバトルロイヤル系のゲームで、わざわざ架空のキャラクターを作り上げて実装前に殺す必要は全くない。リークがあろうと最初からレヴナントだけ用意しておけば良いはずである。しかし、この演出によってレヴナントの持つ「最凶の殺し屋のプログラミングを施されたロボット」という設定がグッと説得力を増す。そしてリークによる予定調和はサプライズによって打ち砕かれ、シーズン4の開始は大いに盛り上がる事になった。そして、このローンチトレーラーのラストカットは、映像内で両親を殺害された一人の少女がレヴナントに対して強烈な復讐心を抱いているシーンで幕を閉じる。

 そして、満を持して、シーズン5を目前に控えたタイミングでシーズン4のラストシーンの続きを描く短編アニメーションが公開。「レヴナントに両親を殺されたことへの復讐」という物語を携えたローバが正式な新レジェンドとしての発表されることになる。

 ローバの参戦によって『Apex Legends』はレジェンド同士の関係性をより深く描く方向へと向かっていく。元々、同郷の友人同士であるライフラインとオクタン、同じ科学者としての共通項を持つワットソンとコースティック、犬猿の仲であるミラージュとクリプトといった具合に、主にトレーラームービーやバイオグラフィーを元に何かしらの繋がりが見受けられるレジェンドの組み合わせは存在していたがシーズン4と5を通して、ドラマティックな物語を背景に持ち、明確にはっきりと対立関係にある二人のレジェンドが登場してしまったのである。

 シーズン5ではピンによる連絡時や蘇生時、物資を渡す時などに生じるレジェンド同士の会話が大幅にアップデートされ、これまでの定型文ではなく、二人の関係性に応じてやり取りの内容が変わるようになった。例えば、ライフラインとオクタンは仲睦まじく本名で呼び合ったり、レヴナントが殆どのキャラクター(特にローバ)から忌み嫌われる一方で同じロボットのパスファインダーからは関心を抱かれていたり、犬猿の仲にあるミラージュとクリプトがどうも上手く噛み合っていなかったりする。さらに特定の場所ではキャラクターが独り言を呟くようになり、例えば、ジブラルタルがApexに参戦するきっかけとなった事故現場に来ると、共に事故に巻き込まれてしまった彼氏のニックのことを思い出したり、レイスが自身が実験台として収容されていた前述のIMC施設に近づくと頭痛に苦しんだりと、各レジェンドの物語、そしてレジェンド同士の関係性がより強くゲームプレイに反映されるようになったのだ。

 特定キャラクター同士による掛け合い自体は『オーバーウォッチ』等でも実装されている要素ではあるが、『Apex Legends』の場合、バトルロイヤル形式であることから長時間行動を共にする中でのコミュニケーションとなるため、レジェンド同士の関係性をより深く描くことが出来るのである。また、同じ動作に対して複数の種類の掛け合いが実装されていることも多く、より様々な場面を楽しむことができるようになっているというのも嬉しい。今後もアップデートでさらに多くのパターンが追加されていくことだろう。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる